知事選まで3カ月 玉城氏、佐喜真氏の事実上の一騎打ちへ
- 2022/6/7
- 政治
9月11日投開票の県知事選は、現職の玉城デニー氏(62)と前宜野湾市長の佐喜真淳氏(57)による対決構図が固まった。県内30近くの市町村でも議員選挙が同日実施となる見込み。本土復帰から50年を迎えた節目の年の知事選で、県民は誰に今後の沖縄の舵取りを託すのか。4年に一度の熱い夏が始まる。
前回と同じ顔ぶれ
玉城知事は6月11日に那覇市内のホテルで記者会見を開き、2期目の出馬を表明する。これに先立ち、5月28日には自民党県連が5氏の最終候補の中から佐喜真氏の擁立を決めた。これまで同様、玉城知事率いる「オール沖縄」勢力と自民、公明の政権与党との対決構図となる。
翁長雄志前知事の急逝に伴う、玉城氏と佐喜真氏の事実上の一騎打ちとなった2018年の知事選では、玉城氏が沖縄県知事選史上最多の39万6632票を集め31万6458票の佐喜真氏に8万票差をつけた。同じ顔ぶれで玉城氏は再選を、佐喜真氏は雪辱を期す。
ただ、前回のような翁長氏死去という「弔いムード」は今はもうなく、オール沖縄勢力は22年に入って県内市長選で4連敗中と支持地盤の沈下が続く。それだけに玉城知事周辺は「誰が相手でも知事選は厳しい選挙戦になる」と見据える。玉城氏の1期目の任期中、名護市辺野古の基地建設では埋め立て土砂の投入が始まり、裁判では沖縄県側の敗訴が続いた。「反対」の民意が最大の後ろ盾となる玉城氏は改めて再選で求心力につなげたい考えだ。
一方、佐喜真氏は政府とのパイプを強調しながら暮らしの向上などを軸に支持を訴えるとみられる。自民側の知事選候補を決める5月の公開演説会で、佐喜真氏はコロナからの経済立て直しに加え、ロシアのウクライナ侵攻にも言及。「沖縄も決して他人事ではない。県民の命と暮らし、平和を守るにはしっかりとした防衛力が必要だ」と強調した。
統一地方選が同日 トリプル選挙も
今回の知事選にはこれまでにはなかった政治環境が加わる。地方議員選挙が集中する沖縄の「統一地方選」の時期が重なるのだ。県内41市町村のうち28市町村で議会議員の任期が9月に満了を迎え、ほとんどで知事選と同日の9月11日の選挙実施が見込まれている。加えて宜野湾市では市長選も同日に行われることが決まり、「トリプル選挙」となる。
それゆえ投票率は幾分上昇する可能性が高く、知事選の戦略にも当然影響することになる。知事周辺は「投票率が上がることがどちらにプラスに働くか見極めが必要」と話す。一方で、佐喜真氏支援に回る創価学会関係者は「都市部では玉城氏、地方では佐喜真氏に相乗効果をもたらすのではないか」と分析する。
沖縄振興でずれる足並み
知事選が近づく中で、政権と沖縄側の対立も顕在化している。
西銘恒三郎沖縄北方担当相は5月31日、「強い沖縄経済」の実現に向けた「西銘大臣ビジョン」を発表。「観光・リゾート」「農水産業・加工品」「IT関連産業」「科学技術・産学連携」の4分野に軸足を置く重点戦略を打ち出した。
これに対し、玉城知事は「県に照会がなく、唐突感がある」と事前調整がなかったことに反発。22年度からの新たな第6次沖縄振興計画が始まったばかりという局面で、振興策をめぐる沖縄と政府の関係の冷え込みが露わになった格好だ。
西銘氏は玉城氏の指摘について「国としてのビジョンという性格に鑑みると、事前に沖縄県への意見照会を行う必要はなかった」として、問題はないとの考えを示している。
沖縄振興をめぐっては、6月に入って一括交付金を活用した整備事業で沖縄県の事務手続きにミスがあり、2021年度に国から交付予定だった10億円余が目減りする問題も発覚。県側が国への報告義務を怠ったことが原因で、事務処理に関する国と県との連携不足を露呈した。玉城知事は「おわび申し上げたい」と陳謝し、月給15%(副知事は10%)を3カ月分減給する議案が県議会6月定例会に提出されることとなった。
玉城氏自身の「ゼレンスキー」発言の問題も尾を引いており、支援する議員の1人は「あらゆることが知事選に直結してくる。揚げ足をとられぬよう、脇を固めて行動してほしい」と要望する。