宮古船台湾遭難から台湾出兵までの3年間 現地牡丹社の今

 

aruqu頭目父子の像建立式典=5月20日、台湾屏東県の牡丹社事件紀念公園内(牡丹郷役場提供)

 今年は1874年の牡丹社事件(日本の台湾出兵)発生から148年になる。その3年前、台湾に漂着した宮古島からの乗組員が原住民・パイワン族に殺害された「宮古船台湾遭難事件」が発端で、明治政府が台湾に出兵した事件だ。

 台湾の屏東県牡丹郷役場は5月20日に、石門古戦場跡地に開園した牡丹社事件紀念公園内で、当時の戦闘で戦死したaruqu頭目父子の像建立式典を執り行った。外部の侵攻から勇敢に郷里を守った不屈精神を称え、後世に不滅の名声を残すためであるという。

 今回は琉球、台湾、日本、清国を巻き込んだこの歴史的事件を振り返る。

3mの巨大モニュメント

 建立した父子像の台座の高さは1.5メートルで、上部の父子像の部分を入れれば、3メートルもある巨大モニュメントである。前方左右に中国語とパイワン族の言葉で像についての説明石碑を配置。牡丹社集落出身の芸術家親子が半年かけて共同制作したものである。aruqu頭目父子は戦死した。故人の肖像や子孫もいないため、部族の戦士の姿を彷彿させるような全身像をデザインにしたという。

遭難事件を利用した日本

 1871年、那覇に年貢を運んだあと帰路についた宮古船が台風に遭い、台湾南東海岸八瑶湾に漂着したことが、3年後の牡丹社事件につながった。乗員69人のうち3人が溺死、残る66人は上陸し、迷い込んだ原住民パイワン族集落である「牡丹社」に助けを求めた。集落の人たちは貴重な水や芋を分け与え救助したが、遭難者たちは逃げようとした。言葉や文化の違いから、スパイと誤解され54人が殺害される事件が起こった。

 当時の明治政府は宮古船遭難事件を利用して、琉球の日本領有と台湾への進出をくわだてた。1872年、明治政府は清国の了解を得ないまま琉球藩を設置、琉球の日本領有を口実にした。そして、清国に宮古船台湾遭難事件の責任を問う。清国は原住民を「化外の民(国家統治の及ばない民)」として責任回避した。これを理由に明治政府は74年5月に陸軍中将・西郷従道を命じ、3千6百名余の兵士を引率し、台湾南部の恒春半島に上陸した。戦いが約2週間続いた22日ごろ、石門でパイワン族と日本軍は交戦をし、激戦となった。最終的には近代兵力を備えた日本軍が優勢で、牡丹社のaruqu頭目父子は戦死してしまった。6月に日本軍は牡丹社を制圧し、その後、清国との交渉が終結する12月まで現地に駐留した。

 台湾を領土としている清国は、今回の日本側の軍事行動に、日本が勢力拡張をしようとしていることに警戒心を抱き、沈葆楨欽差大臣を台湾に赴任させた。結局、清国は50万両の賠償金を支払い、明治政府と和議し、日本軍は12月20日までに台湾を引き上げた。

 日本が台湾に出兵したことによって、清国は日本がのちに琉球所有することを承認するきっかけをつくってしまった。日本軍の西郷従道中将は台湾出兵中に、3年前に殺害された54名の遭難者を自国民として屏東県車城郷統埔に「大日本琉球藩民五十四名墓」を建立した。この墓の碑文の《大日本》から、琉球が日本の一部であることを内外に表明したことになる。よって、1879年に琉球併合をし、1895年の日清戦争で勝利すると、今度は台湾を領有した。

屏東県の大日本琉球藩民五十四名墓(牡丹郷役場提供)

 ところで、1871年の遭難事件の生存者12人は、漢人の劉天保が匿っていたので、台南府に連れて行き、保護された。翌年、無事に福州経由で那覇に送り返されたという。

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