新世代、世界のウチナーンチュ 9)ペルー沖縄県人会文化部長・小波津カリナさん

 

小波津カリナさん(本人提供)

 在ペルー県系4世の小波津カリナさん(36)。ペルー沖縄県人会で文化部長を務めるなど、ペルーでの文化活動を引っ張っている。

行政や民間が強化に取り組む「世界のウチナーネットワーク」。海外に飛び立った多くのウチナーンチュとどのように協力し発展していくべきか、沖縄県のベトナム、シンガポール委託駐在員を歴任した遠山光一郎さんが世界各地のウチナーンチュを紹介していきます。

自分のルーツを市町村ベースで

 「普通の日本人はペルーという国のことを、あまりよく知らないですね」。ペルーという国を紹介して欲しいとのこちらの質問にこう答えられて、ハッとさせられた。「ペルーは知らなくても、マチュピチュはとても有名ですよね」。確かに観光地として世界的に有名なインカ帝国の天空都市マチュピチュ遺跡やナスカの地上絵はテレビなどで見ていたし、沖縄から南米を訪れる方々のフェイスブックでマチュピチュの画像などを何度も見ていたので遺跡の印象は頭にあった。しかし、その観光地とペルーという国自体を、取材時の私は結びつけることができず、少し恥ずかしく思った。

 「ひいおじいちゃんが西原町出身、ひいおばあちゃんが中城村の出身で私は生まれも育ちもペルー・リマの沖縄県系4世です」と自己紹介された。小波津さんに限らず、南米で取材させていただいた方々は皆、自身の沖縄でのルーツを市町村ベースで伝えられるのにいつも驚かされる。

歌やテレビで日本語に興味

 小波津さんは生まれたときから家庭での会話はスペイン語であるが、叔母さんが日本語を勉強し始めた影響があったことに加え、当時、日本の歌やテレビ番組がペルーで人気があり日系人としてそれらの意味を理解したいとの気持ちから10歳の時に日本語教室に通い始める。同時に、家庭内のみならず県系人社会との関わりや行事等を通した日々の暮らしの中でウチナーンチュとしてのアイデンティティが構築され、いつか沖縄に行きたいという夢を持つ。マーケティングを専攻していたぺルーの大学在学中に県費留学に合格して夢叶い、祖父母やご両親も地を踏んだことがない沖縄に行くことになる。留学中は琉球大学で中国や韓国など外国人の学生たちと日本語を学び、また国際センターで様々な国の食事や音楽に触れあうなど国際交流を重ねたことも、貴重な財産になったという。

 他の南米のウチナーンチュも口々に言っていた事だが、沖縄の印象を「きれいなだけでなく、安全で治安がいい事に驚いた。いつでもどこへでも、皆、特に女性が一人で出歩ける環境にとても驚いた」と話してくれた。県費留学制度を通して、沖縄のルーツや日本語を学び、帰国後も経験を生かしている人材が世界中、特に南米で多いことに気づく。私自身は県費でシンガポールに出て行った方だが、県費留学の重要性を実感している。今後も県費留学等、沖縄や世界のウチナーンチュ若者の人材育成に民間、行政は力を入れて欲しいと願う。

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