これからの沖縄振興について今一度考えてみる 第6次計画を読み解く

 

不可欠な専門的技術と行政の“資源不足”

 ―計画や指針を読んでいて、あまり具体性を感じないなという印象は正直言ってありました。プランの立案や実証実験などには専門知識も必要かと思います。

国からはEBPM(Evidence Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)を強く要請されていることもあり、政策のエビデンスをきちんと示すことは重要です。振興計画策定に向けて動いている段階で、当時の河野太郎沖縄担当相がエビデンスに基づいた検証を指示していましたが、それは予算を出す側としての国からすれば当然の話です。

 出す側は細かいところまでは分からない。だから、ちゃんと客観的に判断できるようにというのはごもっともで、それをしないと無駄遣いがはびこることになりますから。ただ、現在の行政にはそれに対応できる資源があまりないのではと思います。

 エビデンスを作るとか用意するのは専門的な技術が必要で、ちゃんとした大学の修士号以上とってなければ統計的な分析はできません。県庁職員にはおそらくそのスキルはないと思いますし、当然県庁職員が全てをやる必要は無いのですが。

 ただ、そもそもの話をすると、厳密な意味での実験は『原理的に無理』という面もあるんです。振興計画のような国土政策は実験ができない。効果を測ろうと思ったら、地球がもう1つとタイムマシンが必要になります(笑)。なかなか難しいので、出来る範囲でやるしかないわけですが、現状を見るとやはりデータがないし、アクセスもできない。そこは問題かと思います」

振興計画を巡って冷静な議論ができているのか?

「主に個人情報が大きな障壁になってはいましたが、国は現在研究者がある程度の条件付きでデータにアクセスしやすいよう、法改正に動き出してます。それも含めてやりようはあるので、緩和の兆しはある。今やってなくても、そのうち我々がアクセスしやすい環境にはなると思います。

 もともと子どもの貧困なんかも沖縄の研究者が頑張ってお願いして、プライバシーを守った上でデータを計算してようやく3割が貧困という数字が出た。データへのアクセスは大事です。

 ただ、データがあっても分からないものは分からない。そこは政策のやり方を考える必要がある。実施する前にちょっとした実証実験が必要だけれど、その実証のデザインの仕方は一般の職員では分からないと思います。

 沖縄全体でどーんと1つの政策をやってしまうと、効果は測れないんです。比較対象がないとどうしようもありませんから。やった所とやらなかった所があって初めて効果の違いが分かりますからね。ただ、実際にやってみると難しいというケースもあります。例えばiPadを子どもに配る効果を測るには、配るところとそうじゃない所で比較する必要がありますが、そうなれば当然『不公平だ』という声も出てくるでしょう。

 こうした効果を測るための必要性を説く人の存在も必要になってきます。それが政治家だったり、ある程度偉い県の人だったりするわけですね。また、これまでの振興計画を巡る議論については、どうしてもイデオロギー的で、冷静な議論ができてない印象が拭えません。そうした部分も含めて、今後の10年を考えてみるべきでしょう」

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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