参院選公示 伊波氏、古謝氏が街頭で訴え 経済振興や基地問題が争点

 
自身の政策を訴える(左から)伊波洋一氏と古謝玄太氏

 7月10日投開票の参議院議員選挙が6月22日に公示された。改選1議席を争う沖縄選挙区には届け出順に、無所属現職の伊波洋一氏(70)、自民公認、公明推薦で新人の古謝玄太氏(38)、NHK党新人の山本圭氏(42)、参政党新人の河野禎史氏(48)、幸福実現党新人の金城竜郎氏(58)が名乗りを上げた。

 事実上の一騎打ちとなる伊波、古謝の両氏の陣営は同日、那覇市内で出発式や出陣式を開き、支持者や通行人に投票を呼び掛けた。19日間の選挙戦の火ぶたが切って落とされた。

「辺野古ノーを示していきましょう」 伊波氏

支持者に出馬の決意を述べる伊波氏=6月22日午後、那覇市泉崎の県民広場

 伊波氏は第一声を本島最北端にある国頭村辺戸岬の祖国復帰闘争碑の前で行い、そこから南下して午後6時から那覇市泉崎の県民広場で出発式を行った。イメージカラーの黄色のハチマキを巻き、のぼりを手にした支持者と共に2期目当選を誓った。

 マイクを握った伊波氏は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、2019年の県民投票で有効投票の72%が辺野古沿岸部の埋め立てに反対したことや、国内の米軍専用施設面積の70.3%が沖縄に集中している現状を念頭に「県民は辺野古はノーだということをしっかり示しましょう。それを日米政府に思い知らせ、断念させてまいりましょう。そして普天間飛行場を閉鎖、返還させていこうではありませんか」と訴えた。県内で自衛隊の配備強化を進める「南西シフト」にも触れ、「77年前の戦場を再び沖縄につくらせてはいけない。その決意で頑張っていきます」と決意を述べた。

 1期目の6年間において、委員会で170回を超える質疑を行なってきたことを報告。「私たちの沖縄がどのような未来を開いていくのか、私たち自身が決めなければなりません」と述べ、国政に県民の声を伝える姿勢を強くアピールした。

 コロナ禍で沖縄の基幹産業である観光業が疲弊し、一時は年間1,000万人に上った入域観光客数が年間300万人まで減少したことを指摘し「しっかり観光客を取り戻していく。外国の航空会社が県内の空港に直接入るには2国間協議が必要なので、外交防衛委員会で強く指摘をしながら、実現していきます」と約束した。

伊波氏(右)への応援演説を行う玉城デニー知事

 激励の挨拶で登壇した玉城デニー知事は「これからの新時代沖縄が、こうしていきたいということを国会で堂々と発言し、堂々と行動していく。そのためには伊波さんをもっと知ってもらい、任せられる人は伊波さんしかいない、ということをしっかりと伝えてください」と支援を訴え、自身も全力で応援していく決意を示した。

ガンバロー三唱で気勢をあげる伊波氏(中央)ら

 その他、共産党の小池晃参書記局長や社民党の新垣邦男副党首らもマイクを握り、激励した。最後は支持者と共にガンバロー三唱を行い、団結を深めた。

「沖縄の未来を創る即戦力となります」 古謝氏

支持者に出馬への決意を語る古謝氏=6月22日午前、那覇市金城のイオン那覇広場

 古謝氏陣営は同日午前8時半から那覇市金城のイオン那覇広場で最初の出陣式を行った。平日の朝でかりゆしウエア姿も目立つ中、イメージカラーの黄緑のハチマキを巻いた支持者が梅雨明けの夏の日差しの中、必勝を誓った。

 挨拶に立った古謝氏は、総務省時代に取り組んできた東日本大震災復興や那覇空港の第二滑走路増設などの実績に触れながら、岡山県庁、長崎県庁での勤務経験から地域目線での課題解決力もアピール。民間でも情報通信を通した地域づくりや沖縄でのベンチャー企業支援などに取り組んできたとし「国の中枢の経験、地域の現場を歩いてきた経験、そして民間企業で取り組んできた経験を、復帰50周年の節目の年に沖縄に持ち帰って、ふるさとの未来のために使いたいという思いで今回挑戦させていただきます」と改めて決意を述べた。

 さらに「みなさん、沖縄は好きですか?」と呼び掛け「私は大好きです。沖縄の未来は、たくさんの問題を抱えた暗い未来なんでしょうか。違います。希望と可能性に溢れた明るい未来を描くべきです。私は、これからの50年は沖縄が日本を引っ張る時代になると確信しております」と未来志向を印象付けた。

 自身が描くビジョンの3本柱である①しなやかで強い経済を持つ沖縄②誰もがチャレンジできる沖縄③みんなが笑顔でいられる沖縄―を改めて紹介した上で「政治は結果です。言っているだけでは何も変わりません。ビジョンを描いて、それを実現する実行力が問われます。県民の皆様の声を力に変えて、沖縄の未来を創る即戦力となります」と約束した。

古謝氏(左)への応援演説を行う西銘恒三郎後援会長

 古謝氏の挨拶に先立って登壇した後援会長の西銘恒三郎復興大臣・沖縄担当大臣は「古謝君はお母様が広島出身、本人は長崎県庁でも財政課長をしてきて、沖縄出身です」と、先の大戦で大きな被害を受けた広島、長崎、沖縄各県にゆかりがあることに言及しながら「平和を推進して暮らしを守る仕事をしていくにふさわしい」と太鼓判を押した。

ガンバロー三唱で気勢をあげる古謝氏(上段中央)ら

 また、自民党の岸田文雄総裁、公明党の山口那津男代表からも応援メッセージが届けられ、代読された。式の最後は参加者全員によるガンバロー三唱で締められた。

9月に迫る知事選の前哨戦

 今選挙戦では、2021年10月に発足した岸田文雄内閣への評価や新型コロナウイルス対策、物価高対策などが主な争点となり、沖縄選挙区においてはコロナ禍で打撃を受けた観光業の再興、子どもの貧困対策、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非なども重要なテーマとなる。

 辺野古移設については「オール沖縄」勢力が支援する伊波氏は反対、自公政権が推す古謝氏は容認と主張が明確に分かれており、県民の判断が注目される。

 全県選挙となるため、9月に迫る県知事選の前哨戦としての要素も強い。知事選には既に玉城知事と、自民党沖縄県連が擁立する前宜野湾市長の佐喜眞淳氏が出馬を表明している。両陣営とも集会や演説で知事選に触れることも多く、セットで支持を広げていきたい考えだ。


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