県議選 気になる告示前情勢
- 2020/5/23
- 政治
新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が解除された沖縄県内では、5月29日告示、6月7日投開票の県議選に向けた与野党の活動がようやく本格化しつつある。定数の48議席を競って65人前後が立候補する見通しで、与野党構成がどう塗り替えられるかが焦点。ポイントになりそうな動向や現段階の情勢を探ってみたい。
投票率は初の50%割れか
全国的に投票率低下が叫ばれて久しいが、沖縄県議選でもその傾向は顕著に表れている。1972年の第1回県議選以降の推移を見ると、投票率は平成に入って下落し、2016年の前回県議選は53.31%だった。
今回は新型コロナウイルスの影響で各陣営とも支持固めのための集会や街頭演説、戸別訪問といった運動を控えざるを得ない状況が続いてきた。どの選挙区でも投票率低下は避けられそうになく、県議選史上、初めて50%を割る可能性が出てきている。
陣営の運動のバロメーターとしても重視される「集票カード」も、思うように回収が進んでいないようだ。
「投票率は40%台前半とみている。集票カードの集まりが悪く、歩留まり(実際に投票する人の割合)も気がかりだ」。沖縄本島中部のある陣営関係者はそう口にする。
長引いた自粛ムードを跳ね返す運動や論戦に期待したいところだ。
候補を絞るも苦戦の公明
党派別では、県政野党の自民党が公認・推薦を含め21人を擁立する予定で、勢力としては最も多い。公明党や保守系無所属を合わせ、県議会の過半数を目指す。
自民は保守地盤の先島地域や本島南部の選挙区で、現職を中心に安定した動きを見せている。今後命運を分けるのは、複数当選を狙う那覇市・南部離島区や沖縄市区、国頭郡区、中頭郡区だろう。いずれも新人を抱え、自粛が続き思い通りに活動ができなかったこともあって知名度浸透などに課題を残す。
名護やうるま、浦添の3市は無投票となる公算が大きいため、自民はこれらの地域からも近隣選挙区に支援を振り分け、票の掘り起こしにつなげたい考えだ。
一方で、公明が4人の予定候補のうち2人を取り下げたことは、自民にとっても誤算だったのではないか。新型コロナウイルスの影響が尾を引き、支持母体・創価学会による組織活動が展開できないことが背景にある。
1976年以降2議席を維持してきた那覇では、今回候補を一本化する。これまで公明が那覇で擁立してきた2候補は常に上位当選で、創価学会を中心に票を均等に振り分ける“お家芸”には抜群の安定感があった。その那覇でさえ、新型コロナウイルスを前にしては組織力が発揮できず、今回は1議席確保がやっとの状況という。
前回県議選で公明の公認候補として初めて議席を確保した浦添市区でも、現職が出馬を見送る。前回は全国から大量の応援を得て選挙戦を展開したが、公明関係者は「この状況を踏まえれば、候補を立てるのはかなりの賭けだった。今回は厳しい」と説明する。
苦境ぶりは、漏れ伝わってくる自民が実施した県議選の世論調査からもうかがえる。5月中旬の調査では、那覇市・南部離島区の公明現職は一本化により当選圏内に入ったが、それでも安全圏にあるとはいえない。
5議席を6人が熾烈に争う沖縄市区も同様で、上位当選を続けてきた公明の現職が、前述の調査で苦戦を強いられているという。公明の選挙に異変が起こっているのは明らかで、どこまで挽回できるか注目したいところだ。
与野党構成に流動的な要素も
現在の沖縄県議会の構成は共産党、社民党、地域政党の社大党など県政与党が26人、野党の自民が14人で、公明など6人が中立の立場を取る(欠員が2人)。玉城デニー知事を支持する県政与党は過半数維持を目標に掲げる。
現有6議席の共産は7人が出馬予定で、「与党第一党」の地位をうかがう。近年着実に勢いを伸ばしており、仮に全員が当選すれば県議会での議席は過去最多となる。
選挙後の県議会の勢力図を見通す上で気になるのが、無所属議員でつくる「会派おきなわ」の存在だ。これまでは県政与党の一角を占めてきたが、玉城知事を支持する旗幟が鮮明な共産や社民、社大と比較して、会派おきなわは所属議員によって玉城県政との距離間に濃淡があるためだ。県議選には現職6人が出馬する。
既に昨年来、政権に近い県内の政界関係者や経済界の一部が会派おきなわの複数議員と接触を繰り返し、県議会の与野党をめぐる勢力図を塗り替えようとする動きも水面下であると聞く。
「選挙が終われば『会派おきなわ』は分裂するんじゃないか」。現職県議の間ではこんな臆測が飛び交う。流動的な要素があり、安易な皮算用は禁物なのかもしれない。