FMやんばる聴取エリア拡大 地域局だからできる防災情報提供へ
- 2022/8/7
- 社会
また、FMやんばるは名護市とも防災協定を結んでおり、災害時には市が提供する情報をすぐに提供できる体制をすでに整えている。その他にも、地元のタクシー会社とも防災時の連絡協定を結んでおり、各地で運行する運転手からタクシー会社に集められた冠水や倒木などの情報を放送で住民に伝えることもできる。
新城社長は、災害時のラジオの強みについて「東日本大震災時は、当日の情報源として7割近くもの人々がラジオで情報を得ていたというデータもあります。電池さえあれば情報を受信できるので、充電やネット回線の状況に左右されることはありません」と話す。
「地域の命をラジオで守る」
かつては名桜大学の大学院で、名護市の振興計画の研究をしていたほど地元への思い入れが強い新城社長。ふるさとの防災について「名護市は太平洋、東シナ海、羽地内海と3つの海に囲まれていて、それぞれに津波のリスクがあります」と話す。実際に、1960年には南米・チリで起きた地震で発生した津波が、太平洋の端まで到達し、波が回り込む形で東シナ海に面する西海岸の羽地地区(当時の羽地村)でも死者が出ていた。
今回のエリア拡大は、地域からのニーズも高かった。「地域の命をラジオで守る」をキャッチフレーズに実現を目指して2020年にクラウドファンディングを実施。目標金額を600万円に設定していたが、それを大きく上回る800万円以上の支援が542人から寄せられた。名護市民だけではなく、名護にルーツのある人や名護市出身者からも広く支援してもらったという。新城社長は「7日の特番ではまずお礼を述べたいです」と感謝する。
結果として2本の無線塔の両方とも周波数を変更しなければならなくなり、機材変更などの設備費用がかさんで「実際は1300万円ぐらいかかりました」と苦笑するものの「でも、やらない訳にはいかないですし」と続行に躊躇はなかった。
クラウドファンディング終了後、2年をかけて国、県、市の各所と調整して、ついに総務省からの許可を受けた。取材日の午前、時間と労力をかけた末にもらってきたばかりだという許可状を手にした新城社長の顔には、隠し切れない笑顔がにじみ出ていた。
人々を楽しませる意味
そんな新城社長は、ラジオDJの「ジョバンニ」モードの時には、番組内の企画で246万円の新車の購入を1時間で決めたり、それに飽き足らず家も購入する企画を立てたりするなど、ハチャメチャな一面も出しながらリスナーを楽しませている。今は「名護にできる新テーマパークの話題に便乗して、汀間地区の公園(テイマパーク)をバズらせて村おこししようと考えています」と企んでいるところだ。
もともと持つエンタメ性はもちろんだが、こうやって人々を楽しませることにも実は防災的な意味がある。新城社長は「2016年の熊本地震では、災害関連死の多さが特徴でした。精神的に参ってしまって自殺してしまう人もいました。そんな中で、ラジオから聞き慣れた声で元気付けて、辛い時に娯楽を提供することも非常に大事な役割です」とその意図を語る。
ゆくゆくはエリア拡大を記念して27時間生放送特番をやることも計画中だ。「どんどんふざけていきたいです。コロナ禍で地域が大変な時に笑顔を届ける使命があります」と新城社長。「これからも僕らが何をやらかすのか期待していてください」と、名護に元気を与え続ける。