【慰霊の日】「なぜ?」を起動して一緒に考える平和教育 沖縄戦を学んだその先へ

 

受け取り方の「世代間ギャップ」

 中高生の頃、狩俣さんは平和学習に苦手意識を抱いたこともあったという。

「6月になると学校の図書館とかで戦争被害の写真が展示されるじゃないですか。本来なら年齢制限で規制されるような“グロ注意”みたいなものもあったはずなんですよ。その頃は『6月は図書館行かん!』って思ってましたもん(笑)」

 沖縄戦を巡る写真や映像、そして戦争の体験談を聞く機会は、知識を得て考えを深めるきっかけを与えてくれるものでもあるが、時代の変化とともに子どもたちの受け取り方もまた変わってきている。狩俣さんはそこに「これまで通りのやり方では情報をそのまま受け取ることが出来ない、“世代間のギャップ”があると思います」と指摘する。

 現在の30代くらいの世代までであれば、小中高生の頃には家族や親戚など身の回りのごく近い距離に戦争体験者がいて、体験談を聞くことや戦争の傷跡に直接目や耳で触れる機会が少なくなかった。こうした“戦争の雰囲気”を肌感覚で感じながら沖縄戦を学ぶ世代と、そうでない世代では、知識の定着や関連付けに大きな差が出る。その意味での“世代間のギャップ”というわけだ。

 こうした現状を踏まえて、さびら代表でライターの島袋寛之さんは「受け取るトレーニングをしていない人は学びの機会を喪失していると思うんです」と指摘する。ちゃんと知りたいがどうやって知ればいいのか分からない、という思いは子どももそうだが、もしかしたらそれ以上に大人も感じているかもしれない。

「そんな人たちの歯がゆさを受け止められるような大人向けの平和学習プログラムも充実させていきたいと考えています。そして大人子ども問わず、興味の入り口に立った時にちゃんと学べる環境を整えることが会社の達成目標の1つです」と島袋さんは語る。

沖縄戦を学ぶことの意義とは

「平和学習で沖縄戦を学んだとしても、それを共有したり、“学んだその先”を示してケアしてくれる人や場が十分にないということも問題の1つだと思っています」と狩俣さん。

「たとえ沖縄戦を学んでいても、未来の事について『正解』を教えることは出来ません。それに唯一の正解を決めつけて伝えてしまうことは、それこそ戦前の教育と変わらないのではないかと思うんです。
 でもだからこそ、“学んだその先”については、教える側も受け取る側もフラットに議論することができるし、一緒に考えていきたい。そんな時間を提供することも平和教育では大事だと思うんです」

 「平和は大事」ということはシンプルかつ明快な答えかもしれないが、では、平和がどう大事なのか、なぜ大事にしないといけないのか、そして今本当に平和を大事に出来ているのか、という問いに立ち止まって対峙している人がどれくらいいるだろうか。

「平和を知るために過去を学んで、そして現状を知った上で今の社会に向き合わなければならないと思います」と狩俣さんは言う。
平和教育の場で平和を作り出すためにはどうすればいいのかを問い続けることが、沖縄戦を学ぶことの1つの意義だと考えています」

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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