SNSで発信する新しい民謡居酒屋のカタチ 「結歌」の歌姫・石嶺愛莉さん

 

パフォーマンスの新鮮さを保つ

 結歌のステージは基本的に石嶺さんの歌と三線、そしてキーボードというシンプルな編成だ。しかし、それ故のシビアさもある。1回のステージが30分前後の短時間とは言え、1日に複数回のライブをするとなると、ともすれば惰性的なパフォーマンスになりかねない。演奏も歌も演者が単調に“こなして”しまえば、それは容易に観客に伝わるし、良い雰囲気は生まれない。

「歌の練習は当然いつもしているし、クオリティの高さは絶対に維持するようにしています。それでも自分の歌に100点を出すことはきっと一生無いと思いますただ、そう感じながら挑戦し続けていくことは嫌じゃないし、むしろ嬉しいんですよね。
 それと、歌は基本私だけなので、私1人だけの歌声で飽きさせないように工夫するようにいつも心がけています。その時々のお客さんの雰囲気で選曲するのもその1つ。楽屋からステージに向かって歩いてる時に客席の様子を見て演奏曲を決めることもけっこうあるんですよ(笑)」

 ライブは基本的に生演奏だ。楽曲のレパートリーは約300曲で、6割ぐらいが民謡だという。石嶺さんの言葉にもある通り、ステージ毎の演奏曲と曲順は日々違う。たとえ同じ曲でも細かなフレーズや雰囲気を変えてちょっとしたアレンジを加えて、ピアノと三線、そして歌のそれぞれでせめぎ合いをしながら毎回のパフォーマンスの“鮮度”を保っている

「ピアノのアレンジに合わせながら、刺激を受けながらという感じです。『お、こうきたか』っていう瞬間が毎回あると、楽しいんです。自分がいかに楽しくやるのかということはとっても大事です」と石嶺さんは付け加える。「リピートしてくれるお客さんが増えてくれると、『自分は間違っていなかった』と思えるので、自信につながりますね」

もうワンステップ上へ

 新型コロナによる影響は未だ完全に収束しないものの、人流は動きつつある。石嶺さんは「店が軌道に乗ってきたからこそ、もうワンステップ上がっていきたい」と意欲的だ。具体的な今後の動きとしては、7月には県外でのライブが決まっており、さらにオリジナル楽曲を9月にレコーディングする予定だという。

「自分のオリジナル曲で、自分もお店も一緒に向上させていくことが今の1番の目標ですね。私は『人対人』でお客さんと向き合うライブがやっぱり1番好きなので、オリジナルの曲を私の“ホーム”の結歌で皆さんに届けたいんです。民謡からポップスまで、多彩な曲を制作中なので楽しみにしててほしいです!」

 終始元気いっぱいに受け答えしてくれた石嶺さん。少しの時間話しただけでも、その魅力的なキャラクターがたくさんの人を引きつけるのも頷けるし、その言動の端々には歌にかける並々ならぬ思いが迸っているのも感じた。
 大好きな歌を届けるために仲間たちと作り出した「自分の居場所」で、今日も石嶺さんの歌声がたくさんの人たちを結びつけている。

■関連リンク
石嶺愛莉さんのTikTok
石嶺愛莉さんのInstagram
島唄ライブ居酒屋「結歌」 WEBサイト

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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