宮古島でこんなにワイン飲めるの? 独自の“ナチュール文化”事情
- 2021/1/26
- 食・観光
宮古島には「自然派ワイン」を豊富に扱ういくつかの店舗がコミュニティを作って独特の“ワイン文化”を築いており、実は全国的にも密かに注目されている。
自然派ワインはフランス語で「ヴァン・ナチュール」。ここ数年で徐々にその存在が広がってきており、好んで飲む人たちからは「ナチュール」と呼ばれて親しまれている。那覇市内でナチュールワインをグラスで飲める店はあまり多くないが、宮古島では数種類のボトルをグラスで楽しめるほど日常に入り込んでいる。
宮古島でナチュールワインが定着する起点になったダイニングバー「ボックリーのチョッキ」(以下ボックリー)店主の鴇澤研二さんと、かつてボックリーに在籍し現在はワインバー「酒と旅 ガリンペイロ」を営む砂田文生さんに話を聞いた。
知識よりも先に飲む風土
ボックリーがナチュールを取り扱い始めたのは、鴇澤さんの前の経営者が店を営んでいた2001年ごろ。ナチュールを輸入するインポーターの妻が宮古出身で、経営者と繋がりがあってワインを紹介され、店に置くようになった。
「もともとワイン文化がなかった宮古島に急にぶちかましてきた感じだと思う。もちろん当時はナチュールであることを強調する訳でもなかったし、『ナチュール』とか『自然派ワイン』という言い方もそこまで一般的ではなかった」(鴇澤さん)
宮古島でメインに飲まれている酒はもちろん地元で造る泡盛だ。前口上を述べてグループ全員で同じ杯を回す「オトーリ」という飲み方も有名で、とにかく飲む。
「宮古ではもともとカッコつけて飲んでいられない気風があって、気取らずに飲むナチュールの日常感との相性が良かったんだと思う」と語る砂田さん。店でワインを飲む客は「ウンチクを語る暇もなく」飲んでいったという。
「店主とお客さんとの信頼関係の中で、知識よりも先にとりあえず“飲むこと”があった。そこで受け入れるか受け入れないかというセッションのようなやりとりがある」と鴇澤さん。
ワインというと、「高級」とか「難しい」という漠然としたイメージが先行して飲む側が勝手にハードルを上げてしまうことが多々ある。だがボックリーでは「こんなのあるけど飲みません?」「だぁ、飲んでみよう」という最短最速のやりとりでナチュールが飲まれ、徐々に日常に溶け込んでいった。
「このワイン好きだと思いますよ、と詳しい説明もなくボトルを出してくるのが良いと言うお客さんもいるくらいだから」と砂田さんは笑う。