「劇場に一生を捧げた人生」首里劇場・金城政則館長を偲び、お別れ内覧ツアー

 
「屋良朝苗」の署名が入った興行営業許可証

営業許可証に「屋良朝苗」の名が…

 そして金城館長の“定位置”だったチケット売り場の傍らに無造作に置かれた、額装された「興行営業許可証」の署名には「行政主席 屋良朝苗」とある。これにはとてつもなく歴史を感じざるを得ない。言わずもがな、屋良朝苗とは1968年に沖縄で初の公選主席となり、72年に沖縄が日本復帰した際に初代県知事に就いた人物だ。この許可証を目にしたツアー参加者からは、「おぉー」と驚きの声も上がっていた。

「営業許可について政則館長に確認した時に、館長が憤りながら『これを見ろ!』と目の前に出してきたんですよ。屋良朝苗の名前を見て『これ有効なんですか!?』って突っ込んだ覚えがあります(笑)」(平良さん)

 平良さんによると、金城館長の遺族は首里劇場を「金城家の歴史」という意味でも保存したいと望んでいるという。しかし、老朽化が激しいため「中途半端なリフォームは厳しい」のが現状だ。今のところ取り壊し以外の選択肢は全面的な建て替えしかないが、そうなると数億円規模の予算がかかってしまう可能性もあるため、建物を残すという方向性はなかなか厳しい局面にある。

参加者やメディアに首里劇場について説明する平良竜次さん(画面中央右)と真喜屋力さん(同左)

 今回のイベントを主催した団体は平良さんと沖縄アーカイブ研究所の真喜屋力さんが中心になって立ち上げた。現在、沖縄県文化振興会の「沖縄文化芸術の創造発信支援事業」に申請中で、無事採択されれば建築・沖縄芸能史・映画興行史などの専門家による劇場の調査、記録、そしてアーカイブ化の道が見えてくるという。

 平良さんは「修繕や建て替えにどれくらいの予算がかかるかも分からないのが現状です」と説明した上で、「保存に向けて僕たちに何ができるかの方向性を打ち出したいです」と話した。

 最後に。72年間もの歴史を詰め込んだ「首里劇場」という文化遺産を今に残してくれて、ありがとうございました。改めて金城政則館長のご冥福をお祈りいたします。

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エロから“原点回帰”首里劇場 名物館長が案内 戦後5年から今 ∥ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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