レンタカー不足は「分かりきっていた」 今年“も”ハイシーズン歯痒いまま
- 2022/4/30
- 経済
耐えて、息切れした時に観光客が戻ってきた
「最盛期に比べてトータルで4割くらいの減車で、価格は安い時の5割増しという状況です」と説明するのは、沖縄県レンタカー協会の白石武博会長だ。
「一気に減車したわけではなくて、それぞれの事業者が耐えて耐えて出来るだけ少なく減らしていたのですが、息切れした時に観光客が戻ってきたな、という感覚ですよ」
さらに「車の台数が減っている分、それが値段に波及するのは事業者としては当然の判断」と付け加えて、業界の価格設定事情についても触れた。
「業界的には、正直に言ってこれまで価格が安すぎた部分も否めず、それが観光の質の低下につながっていた面があるのも事実でした。その意味では、ある程度の適正化を図る機会でもあるのかなと思ってもいます。しかし、やはり現状は観光客のロスになってしまっていると言わざるを得ないし、今の状態でお客様を迎えることが果たして良いことなのか、という疑念も正直あります」
県レンタカー協会によると、同協会会員の車両台数は2022年3月時点に15,276台で、20年同期比で約3割減となっている。コロナ前のピーク時には、19年7月で27,710台を保有していた。しかし同年秋頃から減車の一途をたどり、21年3月には16,000台を割り込む。同年夏には一時的に増車傾向になったものの、秋に再び減車となって現在と同水準で推移している。
公共交通機関活用を推奨するけれど…
沖縄総合事務局は4月に入って「レンタカーを利用できない場合の公共交通機関活用の呼びかけ」との文書を発表し、「県内においては、路線バスはモノレールをはじめ、様々な公共交通機関を利用することにより、多くの観光地を訪れることが可能」としてレンタカー以外の交通手段の活用を推奨している。
文書ではレンタカーが利用できなくとも、快適な観光地巡りができように観光関係団体に公共交通機関の情報を周知するよう協力要請し、沖縄観光コンベンションビューローが発信している「レンタカーに頼らない沖縄旅の提案」の周知などを行うとしている。
確かに那覇市近辺のエリアであれば、モノレールやバスに加えて、近年多数設置されているレンタサイクルも利用することで、かなりの移動範囲をカバーすることは可能だろう。車の利用を減らすことにつながればSDGsの考え方にもフィットした動きにもなるかもしれない。
だが、子どもがいる家族連れでの移動や、本島北部エリアでの移動を考えると、やはり現時点ではレンタカーが最も現実的と言わざるを得ないのが現状だ。
観光を「保護」する政策を
今後すぐにはレンタカー不足が決定的に解消しないことを踏まえて、白石さんは「ホテルとタイアップして那覇市内で海も含めて楽しめるような商品も企画している」という。「当面はどうやってしのでいくかという考え方で動かないといけないですよ。那覇市内でも波の上ビーチもありますから、ほかにも色んな要素を加えて魅力的に提案していく方向性を探る必要があります」
県内のアクセシビリティについては「そもそもコロナ前から土壌が出来ていない」と喝破する。「レンタカーの商売はしているが、必ずしもそれが唯一のベストと思っているわけではないですよ。移動がきちんと担保されるようなインフラがあれば全然それでもいい。でも、今は結局車が選ばれる状況ということなんです。鉄軌道も僕が生きている間には実現しないでしょうし」
レンタカーも含めた観光産業への支援措置については「観光を沖縄の『リーディング産業』と位置付けているにも関わらず、行政や政治家は観光を“産業”と認識していないと思います」と白石さんは厳しく指摘する。
「今はバスガイドも減っているし、飲食店関係も含めて観光に携わる人材が大分離れていきました」と危機感も大きい。「今からでも“観光”という名前のついた保護政策をきちんと実施しなければならないと思います」と強い口調で話した。
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