国内初「星空保護区」八重山が掘り起こす夜の観光新需要

 

 沖縄の美しいビーチやサンゴ礁が「どこにでもあるものではない」ように、満天の星々もまた然りだ。大都市に住む人にとっては、そもそも星空を見上げようと思えない人もいるだろう。星空ツーリズムのツアーはコロナ前、香港の旅行客からも人気があったという。「香港ではどうしても星が見えないみたいなんですよね。言葉が分からなくてもツアーに参加して星を楽しんでくれていました」と宝園さんが話すように、インバウンド誘客にも効果的だといえる。

 しかし、これから星空の観光が盛り上がっていこうという矢先のコロナ禍突入だった。沖縄観光コンベンションビューローの担当者は「星空保護区に認定されたことが誘客の大きなフックになりえましたが、プロモーションのタイミングを逃してしまっているというのは正直なところです」と声を落とすものの「星空の魅力は写真や動画で残しづらい分、実際にそこに来た人にしか分からない感動があります。観光とは相性の良いコンテンツです」と期待を寄せる。

ツアー参加者ら(提供)

八重山の星空が美しい理由

 なぜ八重山の星空は美しいのか。これには大きく3つの要因があるという。

1.明かりの少なさ

 「人間の出す光は強いんですよ」(宝園さん)というように、人里の明かりは想像以上に星空の見え方に影響するという。石垣島は南部の石垣港周辺に人口が集中しており、島の面積の大半は農地か山地であることから明かりが少ない環境が得られる。

「星空ファーム」の周辺

2.大都市が近くにない

 離島であるために周囲は海で、一番近い大都市は270kmほど離れた台北であるため、周辺からの光が影響しない。

3.上空の大気が安定している

 乱気流が少なく、星が瞬かない環境にあるため、星が輝きを保ったまま、まるで空にぴたっと貼り付いているように見える。「なので石垣には国立天文台もあります」(宝園さん)

「地元の人間として、島の良さを伝えたい」

 宝園さん自身は、10年間ほど東京で音楽関係の仕事をしており、2012年に家族と共に石垣島へ戻ってきた。島を出る前、星空は当たり前の存在だったが、小さな娘たちを連れて星を見に行った時に「恐ろしいほど星があった」という。まずは我が子に星の説明ができればと受けた星空マイスターの講習が、今現在、星の仕事に携わるきっかけとなった。

 西表石垣国立公園は星空保護区の認定を受けたものの、2023年度までに公園内の野外照明を改修することを条件とした「暫定認定」でもある。「星空を守っていくことに、地元の人間として関わっていきたい。島の良さを伝えたい」と、ツアーを通じて星の美しさや楽しさを伝えると共に、星空ツーリズムとしては天候に左右されない施設を作り、星空保護や光害についての学びの拠点を整備する構想もある。

 古くから八重山の人々の生活の軸になってきた“むりかぶし”。令和の世になって「地元が誇るべきもの」「新しい観光資源」の両面で、八重山の魅力を照らし出す存在となる。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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