個性光る島々の黒糖 甘味のプロが味利き!

 

 沖縄が国内外に誇る名産品・黒糖。甘みはもちろん、酸味や苦味なども含んだ深い味わいが楽しめる。また、ミネラルやビタミンの豊富に含んだ健康食品としても評価を得ている。

 そんな黒糖、作られた島々で味が違うのをご存じだろうか。今回は、東京でたい焼き修行をしたのちに台湾で専門店「若葉鯛魚焼」をオープンさせた陳姿樺さんに、8つの島それぞれの黒糖の違いを解説してもらった。

台湾でも人気の沖縄黒糖

 陳さんが2013年に台北市内でオープンさせた「若葉鯛魚焼」は、厳選した原料を直接農家から仕入れるなどしたこだわりぶり。台湾の数々のメディアに取り上げられるなど人気を博した。陳さん自身、早稲田大学を卒業するなど日本との関わりは深く、現在はお店を休止して会社員として沖縄で暮らす。

 「沖縄の黒糖は台湾でも人気です」と陳さん。沖縄旅行のお土産としても人気が高いという。台湾のタピオカドリンク店などでも「沖縄黒糖」などとメニューに表記に加わるなど、目にすることも多い。

 「臭みがなく、香りがいいです。他の黒糖は甘さが強すぎるのですが、沖縄の黒糖は甘さがありながら刺激がなく、なめらかな味わいです」

 今回は、製糖所を有する伊平屋、伊江、粟国、多良間、小浜島、西表、波照間、与那国の8島それぞれの黒糖を陳さんに試食してもらい、香り、甘味、酸味、コク、舌触りの5項目に沿って説明してもらった。

 沖縄県黒砂糖協同組合が発売する、8島の黒糖がそれぞれ小分けされたセット「八島黒糖」。2020年産。

伊江島産の酸味は芋と合う説

 とりあえず、なんとなく産地ごとに実際の地図のような配置で並べ、北東の島からどんどん食べていく。

■伊平屋島

直接食べてコクを楽しむ

香り ★★★☆☆
甘味 ★★★☆☆
酸味 ★★★☆☆
コク ★★★★☆
舌触り★★★☆☆

「最初なので基準点として平均的にしています。でもコクは強めだと思います。直接食べると楽しめるはずです」

■伊江島

心地よい酸味が魅力

香り ★★☆☆☆
甘味 ★★★☆☆
酸味 ★★★★☆
コク ★★☆☆☆
舌触り★★★☆☆

「良い酸味が感じられます。芋系の何かと合うと思います。黒糖いもけんぴとか作ったら美味しいはず」

■粟国島

食べやすくオールマイティー

香り ★★★★☆
甘味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
コク ★★☆☆☆
舌触り★★☆☆☆

「さっぱりしていて食べやすいので、何でも使えると思います。そのままコーヒーとかお茶と一緒に楽しんでもいいかもしれません」

■多良間島

濃厚なコクはドリンクに最適

香り ★★☆☆☆
甘味 ★★★☆☆
酸味 ★★☆☆☆
コク ★★★★☆
舌触り★★★★★

「濃厚。ミルクと合うと思います。黒糖豆乳とか黒糖ラテとか作ったら美味しそう」

 ここまで4島制覇。

「全部おいしいですね、沖縄の黒糖。甘い黒糖ばっかり食べていると、なんかラーメン食べたくなるね」

与那国産はつまみにも

■西表島

クセが少なく初心者向け

香り ★★☆☆☆
甘味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
コク ★☆☆☆☆
舌触り★★☆☆☆

「良い意味でくせがないので、初心者向けという感じです。誰が食べても美味しいと思います」

■小浜島

かき氷にかける蜜にも

香り ★★☆☆☆
甘味 ★☆☆☆☆
酸味 ★☆☆☆☆
コク ★★☆☆☆
舌触り★★☆☆☆

「味が濃くないので、かき氷にかける黒蜜とかに良いかも。もともと氷には味がないので、強すぎないぐらいの味がちょうどいいと思います」

■波照間島

スイーツ全般に向いた味

香り ★★☆☆☆
甘味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
コク ★★☆☆☆
舌触り★★☆☆☆

「前の2つに似ています。さっぱりしていて、スイーツ全般に良いかもしれないですね」

■与那国島

泡盛のつまみにどうぞ

香り ★★★★☆
甘味 ★★★☆☆
酸味 ★★★★☆
コク ★★★★★
舌触り★★★★☆

「お酒に合うかも。泡盛飲みたくなりますね。沖縄っぽさを感じさせます。上級者向けですかね」

味の違いは島の個性!

 西表、波照間、小浜の3島の黒糖には同じような特徴が感じられたという。

 「場所が近いところは本当に似ています。土壌とか気候とか、いろんな条件が近いからかなと思います」

 味の強さやコクの違いなどは三者三様十人十色、優劣などではなくそれぞれの良さがあるという。

 「コクが強いのはそのまま食べるのに向いていると思います。台湾のタピオカミルクティーに入れるとしても、コクが強いのが良いと思います。逆に、さっぱりしたものはあんこ作りなどに向いています。小豆の香りを引き出せると思います」

 8島の黒糖を、約1時間かけて全部食べ比べた陳さん。

 「人生で一番こんなに黒糖食べましたよ。実際に食べ比べてみると違いが分かりますね。島ごとにこんなに違うとは思っていませんでした」

 島ごとに違う味わいは、島の個性の結晶だ。暑い夏、ミネラル補給やお口のお供に沖縄黒糖、舌で転がしてみるのはいかがだろうか。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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