「時代は東京じゃない、台湾」コロナ禍で“逆に有利”な留学事情

 

2年間の留学生活

「大学ってそもそも勉強する場所だったな」と思い起こさせてくれたのが、平良さんが2016年から2年間通った台湾の大学院だった。

平良さんが通った台湾国立政治大学(同大学HPより)

 台湾トップレベルの大学で教えている教授陣は、アメリカで研究したり大学院を卒業したりしている人が多いという。「入るのは簡単だが出るのが難しい」と言われているアメリカの大学の仕組みを踏襲しており、日本とは同じ東アジアにありながら大学の教育システムがまるで違う。

「テストの2カ月も前から、学生はみんな図書館にこもり始めます。かばんに山ほどの教科書を詰め込んで。受験生の時以上に勉強しているという感覚がありました。勉強しすぎて体調を崩しそうになるぐらい頑張りました」と、当時の努力を振り返る。そんな学生生活の中では年齢や国籍を問わず、誇りを持って勉学に打ち込む仲間にも恵まれた。

たくさんの仲間に囲まれる平良さん(前列左から3人目、本人提供)

「なんとなく海外に行っても良い 」

 県内の進学事情を見れば、大学進学を希望する高校生より大学の入学定員の方が少ないため、一定数は必ず県外に進学することになる。

「沖縄の人は昔から、他府県に比べて『県外に出る』ということにあまり抵抗がないように思えます。もしなんとなく県外に行くのならば、なんとなく海外に行っても良いんです。台湾の場合、日本と比べても学費や生活費の面でも経済的です。海外に行く方が、いろんな友だちもできるし外国語もできるようになります。なにより、外国人や外国文化に対して“場慣れ”できます

 自分自身も海外では外国人となることで、国際的な人的交流が活発化していく社会への順応力を育てることができる。

「例えば、今はたくさんの外国人の方がコンビニなどで働いています。自分が一度海外に出て海外生活や言語取得の難しさを知っている人は、外国人がコンビニで働いて日本語で話してくれていることが、どれだけありがたいことか分かります。沖縄に来る外国人に対しても優しくなれるはずです。そんな経験は一生ものです」

 総務省の資料によると、日本の人口は2008年をピークに減少に転じている。このことは日本経済が他国と比較して没落していくことをも示している。

「もうバブル時代に作り上げた金字塔にはどうやっても追いつけません。減少していく労働力を埋めるために外からの人材を上手く受け入れた方がより沖縄は伸びることになると考えます。そういう方向にシフトしていくべきです。そのようにして成功したのがシンガポールですよね」

多くのことを吸収するチャンスに

 コロナ前に沖縄と台湾を結ぶ国際線が通っていた時は、安ければ往復1万円ほどで航空券が買えた。時間にして片道1時間半の距離だ。観光客も多く訪れていた。

 「台湾から、旅行だけでは飽き足らずに移住を希望する人も、今後確実に増えると思います」と平良さんは見通す。「今はテレワークもできるので、これからは台湾の人が沖縄で2拠点生活をするケースも増えそうですよね」と話す。自身も近い将来沖縄と台湾での2拠点生活をする計画だ。

 世界的なIT企業は台湾に拠点を進出させ、半導体分野では台湾が世界をけん引するなど、将来性も光る。平良さんは「今の高校生の世代は僕らの世代よりもっとスマートで器用だと思うので、外で多くのことを吸収してほしいと思っています」と、東シナ海を挟んだ“近所”にある広い世界を勧めている。「大学生の時ぐらいですよ、納税の心配もしなくていいし、勉強ばかりしていても誰にも怒られないのは。国外で思いっきり勉強した方が良いです」

 地球儀を眺めると沖縄から台湾は目と鼻の先。与那国島からは台湾を望むことができる。近くの世界で大きな可能性が待っている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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