自然遺産登録で地元は今 世界で唯一ヤンバルクイナに会える施設

 

県内からの来場者激増

―新型コロナの感染拡大による施設への影響はありましたか?

「世界自然遺産へ登録するようユネスコの諮問機関が勧告を出した昨年5月も、登録が本決定した7月のどっちも緊急事態宣言中だったので、ずっと施設の入場者数は低空飛行の状態でした。

 ただ、コロナ禍以降に施設を訪れた人は、沖縄県内からの方が多かったです。通常なら県外の人が7割ほどだったのですが、昨年に関してはその比率が逆転しました。全体の来場者数は微減にとどまって、県内からのお客さんが約2.5倍と一気に増えました。

 やはり、世界自然遺産として注目を集め出したのが大きかったと思います。ヤンバルクイナを見ることのできる施設は世界中でここだけなので。密集を避けられるような自然の中で、スペースを確保できるような場所に移動しようという流れもあったかと思います。

 ヤンバルクイナは、観光コンテンツとしてもちょうどいいんですよ。自然の中に生息しているヤンバルクイナには、『やんばるに行けば10回に1回は見られるかもしれない』というちょうどいい“ギリギリの魅力”がありますよね。他の希少種の場合はほぼ全く会えないということもありますから。

 オンラインツアーを昨年だけで10回ほど行いました。オンラインツアーに参加した人が実際に国頭まで来てくれたというケースも何度かありました。まずはヤンバルクイナや国頭のことを知ってもらうことで、学びたい、泊まりたい、住みたい、というように思ってもらえたらと思います」

―リモートワークやワーケーションの普及で、住む場所について距離的な制約も減ってきました。

「若い世代の人たちに、完全移住じゃないにしても、多拠点生活の一つの場として国頭村に来てもらえたらと思います。(元の学校に籍を残したまま他の学校に行ける)デュアルスクール制度の実現に向けて働きかけたいです。例えば東京など都市部の子どもたちが自然のことや世界遺産のことをトータルで学んでもらえたらと思います。

―生物多様性を守ることの必要性をどう考えますか?

「固有種は『ここにしかいない生き物』ですから『ここで生存できない』となると、地球上で絶滅することになります。代わりの利かない存在です。どんな動物の命も大事だと考えた時に、種として絶滅するともう復活することができません。あとは単純に『見ていてかわいいから守ってあげたい』という気持ちを持つことで、他の生き物や地球環境に優しくなれたり、他者に対しても思いやりの心を持って接することができたりするのだと思います。

 人間も含めてさまざまな動物が生態系や相互関係の中で生きています。多様な生物種があるということは、人間や他の動物にとって有用であることもあります。そんな中で特殊な種を残していくことは、生物学的にも意味のあることかと思います」

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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