首里城火災から2年 まちづくりの視点から見た復興の課題とは

 

生活空間と観光地との両立

 もう1人の副理事長・平良斗星さんは首里城火災について「残念だし傷つきもしたし、喪失感があったのも間違いないです」と振り返りつつも、焼失以前については「正殿があることによる地域との“タイアップ感”はほとんどなかった」と指摘する。その上で「今この機会このタイミングで、交通渋滞を無くすということに限らず、首里城がもっと地域に受け入れられて、首里全体が納得してきちんと潤う形を考えた方がいいと思います」と述べる。行政の施策と市民生活との間にあるギャップを踏まえながら、首里城と周辺地域が観光地であり地域生活の場でもあることをどうすれば両立できるのかという問いに向き合う。

 首里城公園とその周辺地域の整備に関しては、復元後の「周遊性」についての議論も重要で、これもまた周辺地域の渋滞問題につながる可能性が大きい。県がまだこの点について明確なビジョンを示していないことを挙げ、「正殿や中城御殿、円覚寺を復元するのであれば観光客が首里城付近を歩いて見て周るることも容易に想定されます。そうすると滞留時間が長くなり、駐車スペースの不足でただでさえ渋滞が起きていた状況がさらに逼迫するという問題が出てきます」と指摘する。
 こうした課題への対応策もないままに「観光地としての復元だけをするというのは、ちょっと無責任だと思います」として、提言書にもある観光客のキャパシティ調査の必要性を説く。「地元住民の生活空間を守りつつ、観光も成立させるという落とし所をきちんと見極めないといけません

50年後、どんなまちにしたいか

すいまち研が作成した「首里杜地区・首里歴史エリアまちづくりMAP」

 平良さんは「地域の人がちゃんと声を上げて理性的に対話をして、理想を語りながら施策を変えていくことは大事なことです」と話す。こうした声をきちんと伝えたことで、県の復興基本計画の一部には提言書の提言が取り入れられた。首里城を巡るまちづくりには公園文化財や土地利用も絡むため、制度上行政との関わりは不可欠だ。「全てを分かり合えるというわけではないですが、生活者目線での提案を1つ1つ形にできるよう関わっていくしかないです」

「首里を魅力的な街にしたいというのが第一だし、沖縄だけでなく全国的にもモデルケースになれる地域だと考えています」といのうえさん。ただ、首里の住民以外にとっては実感に乏しく実質的には関係ない話でもある上、首里地域内でも首里城と距離のある地域ではどうしても温度差が生まれてしまうため、首里という枠組みの中での合意形成が必要になる局面もある。
 すいまち研は10月に首里地域の交通問題・回遊促進のための拠点整備、高齢化対応などを含め、住民の暮らしのQOL向上を地図でビジュアル化した政策マップを作成して公開している。

 また、まちづくりの観点では計画のタイムスパンが必然的に長くなる。50年後を見据えた上で細分化した10年間のビジョンを明確化し、さらにその中での2~3年という区切りで具体的な計画を詰めていかなければならない。しかし、対応する行政職員の異動があるため、長期的なビジョンを一貫した施策を展開していくことは困難なのが現状と言わざるを得ない。

 いのうえさんは「住民として地域課題を解決するための感覚を施策に落とし込むにあたって、どうしても共有できない部分が出てきてしまいます」と直面している課題について話した。

 首里城火災に加えて新型コロナウイルスの影響もあり、地元住民の生活を踏まえた観光のあり方についての見直しが迫られている。観光客だけが訪れるのではなく、地元にも愛されて地元が誇りに思う場所としての首里城を復興するための対話と議論をさらに深めていかなければならない。

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真栄城 潤一

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1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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