“見せる復興”進む首里城 正殿現場を覆う巨大建造物来年度着工

 

 首里城火災から10月31日でちょうど2年を迎える。内閣府沖縄総合事務局、沖縄県、沖縄美ら島財団の3者に加えて、県民はもちろん、世界中に広がる県系移民や首里城復興に思いを寄せる多くの人々の支援を受けて復興が進んでいる。復興における大事な要素の一つとして「段階的公開」をしながらの情報発信にも努めており、その一環で正殿復元を円滑に進めながら来場者がその様子を見ることができるよう、工事現場を覆いつくすような仮設の建物を来年度から整備する。

首里城火災とは

火災時の首里城(Jinhee Masahiro Lee 撮影・提供)

 10月31日未明に発生した火災では、出火元とされる正殿の他、北殿、南殿・番所・近習詰所、書院・鎖之間、奥書院、二階御殿、黄金御殿・寄満の7棟が全焼。女官居室、奉神門(北側)の2棟が一部焼失した。正殿に常設していた工芸品421点も焼失、焼損した。

国営沖縄記念公園事務所資料より

 消火や現場検証を行った那覇市消防局は火災原因についての最終的な特定に至らず、沖縄県警も放火などの事件性は否定している。損傷が激しく証拠の特定ができない一方で、正殿の電気系統から出火した可能性を指摘している。

今後の復元計画おさらい

 内閣府沖縄総合事務局の資料によると、正殿の本体工事は2026年度に完成し、その後、南殿や北殿の工事に入る。正殿の工事に2022年度から着手するため、南殿や北殿など別の建物があった場所は正殿工事のための作業ヤードとして一旦整備される。

首里城復元のための関係閣僚会議(令和2年3月27日)資料より

 プロジェクトは「首里城復元」の他にも「段階的公開」「地域振興・観光振興への貢献」の3本柱で進めていく計画だ。

 そのうち「段階的公開」については、解体や復元の様子を、現場の安全を確保しながら一般公開すると共に、情報発信に努めていく。

復興を見せるための仮設建物

 その一環として、正殿復元の様子を来訪者が見られるように各種施設の整備が進んでいる。

 今年度から正殿工事のための作業場となる仮設の建物が整備され、内部で木材加工や組み立てなどを行っていく。併せて、内部の様子を見るための見学通路の整備が進んでおり、2022年度からは上階からも見下ろせるように見学者用階段やエレベーターも整備される予定だ。

CGイメージ図。国営沖縄記念公園事務所資料より

 奥書院や南殿があった場所から、御庭(うなー、正殿等の前の広場)には現在、工事用車両が行き来できる仮設道路が開通しており、日々の資材などを運んでいる。

結局今はどこに入れるの?

 現在、首里城公園内で一般開放されているのは、無料区域が守礼門や歓会門など御庭入口の奉神門に至るまでの道のりの他、那覇市内を一望できる展望台「西(イリ)のアザナ」や火災の熱による被害を受けた龍柱を展示している大龍柱補修展示室など。有料区間としては、奉神門を越えた後にある世界遺産の正殿遺構や世誇殿・復興展示室など、復元工事の現場となっている箇所以外は訪れることができる。

世界遺産の正殿遺構

 1453年から、これまで5度の火災を乗り越えてきた首里城。復興が進みゆく姿を県民と共有しながら歴史を作り直している。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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