「体験の保障は子どもの権利」 部活動の派遣は課題が山積み

 

「休眠預金」活用で県内3団体に助成

 この支援事業は、日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が実施する「休眠預金活動事業」からの予算を原資にしている。金融機関講座で10年以上出し入れが確認できない休眠預金を民間公益活動促進のために活用した、2019年度から始まった制度だ。みらいファンド沖縄の派遣事業はは、初年度に選定された“1期生”となる。

 現在助成している団体は県サッカー協会(那覇市)、NPO法人豊見城市体育協会(豊見城市)、株式会社ハブクリエイト(石垣市)の3団体。2022年度までの3年間で1団体あたり年間約300万円の旅費を助成しながら、派遣費の総額や家計負担額などの調査も実施し、この課題の全体像を明確化していく計画だ。団体の選定については、サッカー協技は「種目」、豊見城体育協は「地域」、そしてハブクリエイトは「離島」というテーマを設定しており、それぞれの枠を通してどのような現状と課題が浮かび上がるかについても調査を進めている。

 2020年度の派遣事業実績は、補助件数が23件、補助人数が194人。1人当たりの平均派遣費用56,592円に対し、休眠事業での1人当たりの平均補助金額は11,587円だった。

「体験のグレードアップも同時に」

 これまでに実施した調査では、まず県内の部活動派遣についての市区町村からの補助について、課題意識を持っている行政は多いものの補助の充実度にはかなりの地域差があることや、地域によっては補助が1回に限られているため複数回遠征があると本人や家庭の負担額が増す一方だということが明らかになった。
 さらに、家計負担額の実態状況に関しては、補助を受けた児童生徒や保護者、指導者からは「派遣に行って普段体験できないことができて良かった」という喜びや感謝の声があった。しかし一方で、主に離島地域からは「1大会参加に伴う渡航費、宿泊費、現地交通費などの家計負担は依然として大きい」「備品調達などの面でも本島の学校との格差はずっと是正されない」「離島の子どもたちが金銭的な部分でデメリットを感じないようにしていきたい」といった意見も多数あった。

 この他にも、現在の行政支援ではいわゆるメジャーな種目にしか補助金が出なかったり、引率の指導者が自腹せざるを得なかったり、そもそも部活をやりたいが家計の事情でできない“諦めている人たち”がどれくらいいて、負担率のラインをどれくらいにすれば参加できるのか見極めることなど、課題はまだまだ山積みと言わざるを得ないのが現状だ。

 今回の事業実施期間の残りは1年半。まだ「パイロット版」ではあるが、平良さんが目指すのは「それぞれの地域やスポーツの種目が手を組んで、旅費などの家計負担率を下げていくことで、体験保障を支援する」ことだ。

「現状からすると、権利保障の基準の明確化も必須だと考えています。保護者や教員など1番近い人たちが子どもたちの権利を奪ってしまうケースもある。そんな悲しい事態にならないように、教育を受ける権利と同等に体験を保障し、そして体験そのもののグレードアップもできる環境を整えていきたいですね」

■関連リンク
沖縄・離島の子ども派遣基金事業(みらいファンド沖縄)

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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