再建への「大きな一歩」踏み出す 首里城正殿起工式
- 2022/11/4
- 社会
2019年に発生した火災で焼失した首里城正殿の起工式が11月3日、那覇市首里城公園内の特設会場で執り行われた。式典には岡田直樹沖縄担当相や石井浩郎国土交通副大臣、玉城デニー知事などが列席。正殿に使用するために国頭村で調達した木材「オキナワウラジロガシ」へのノミ入れのセレモニーを実施して、2026年秋の完成を目指して再建へのスタートを切った。
玉城知事はあいさつで、起工式について「県民はじめ、国内外のたくさんの皆様の思いの結実に向けた大きな一歩と捉えております」と述べ、復興を願った。
総工費120億円、防火・防災対策を強化
起工式は内閣府が沖縄の日本復帰50年記念事業の一環として開催。政府関係者や沖縄県関係の国会議員、地域住民も参加した。2022年度は素屋根の建設から着手し、23~26年度にかけて正殿本体の工事に取り掛かる予定だ。
19年の火災では、正殿や北殿、南殿など7棟が全焼した。それ以前にも、火災や戦災で焼失を繰り返してきては復元されてきた。前回の「平成の復元」は1992年に実現し、正殿の地下で見つかった遺構部分などの城跡は2000年に世界文化遺産に登録された。
内閣府によると、今回の復元の総工費は約120億円。平成の復元時と異なる点としてまず、スプリンクラーや熱・煙感知器の設置、消火用水を城郭内に送水する連結送水管設置と放水口の新設など防災・防火対策の強化が挙げられている。
さらに、新たな知見に基づく復元として、正殿を彩る朱色の漆塗装の上塗りに、名護市久志でとれるバクテリア由来の顔料「久志間切弁柄(くしまぎりべんがら)」を使用すること、古写真や絵図などの資料の検証に基いた西之廊下の延伸なども発表されている。
「消失前よりさらに魅力ある首里城に」
起工式のあいさつで岡田沖縄相は「首里城は沖縄の歴史と文化が凝縮した沖縄の象徴、沖縄県民の心のよりどころです。沖縄の方々にとって、火災によるご心痛は極めて深いものであったと拝察します」とした上で、「火災による焼失が二度と起こらないよう、再発防止策を徹底するとともに、沖縄県と連携して防災防火対策の強化に取り組んでまいります」と述べた。
また、今回の復元過程を段階的に一般公開する取り組みや、首里城公園での関連イベントを開催することを通じて「沖縄の地域振興や観光振興にも幅広く繋げていく考え」を示して、「国として、責任を持って復元に取り組んでまいりたい。一緒に頑張りましょう」と呼び掛けた。
「本日の起工式は、1日も早い首里城の復元を願う県民はじめ、国内外のたくさんの皆様の思いの結実に向けた大きな一歩と捉えております」と、この日を位置づけた玉城デニー知事。
首里城の焼失が県民のみならず世界中に衝撃と喪失感を与えたことに触れつつ、「同時に、復元に向けて多くの人々が立ち上がり、国内外から激励の声や寄付が寄せられ、復元に向けた大きな推進力になりました」と述べ、寄付金が復元に必要な木材や瓦などの調達、彫刻の制作に活用されていることを説明して謝意を示した。
昨年3月に策定した「首里城復興基本計画」を基に、首里城を中核とした周辺一帯の街づくり、伝統技術や琉球文化の継承を一体的に進めていくことを強調して「焼失前よりさらに魅力ある首里城になるよう、しっかりと取り組んでまいります」と力を込めた。
木材運搬はパレードで
この日、首里城公園内では起工式に先立ち、木材を首里城まで運んで運搬する祭事「木遣行列」が催された。「木遣(きやり)」は木を運ぶことを意味し、神社造営の神木などの建築用木材をたくさんの人たちで運ぶ際に用いられる言葉だという。平成の復元の時にも実施されており、今回も旧中山門から首里城内へと木材が奉納され、正殿復元工事の無事を祈願した。
運搬されたオキナワウラジロガシは樹齢98年、長さ約9m、重さは4t。国頭村で調達された3本のうちの1本だ。ちなみに、平成の復元の際には県産の材木は使用されていなかったという。
10月29日に国頭を出発したこの「御材木」は、翌30日に那覇市国際通りでお披露目され、同日に開催していた「第7回世界のウチナーンチュ大会」前夜祭パレードとコラボレーションして首里城復興の進捗状況を海外にもアピールした。
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