“まるでおとぎ話”のような「ちむどんどん」
- 2022/6/29
- 社会
NHK朝の連続テレビドラマ「ちむどんどん」。6月27日放送(第56話)の平均世帯視聴率は14.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だった。この数字が良いのか悪いのか。「あまちゃん」以来、連ドラを見たことがない私には何とも言えないが、平均20%前後をたたき出す国民的番組として、しかも「沖縄復帰50年」の肝いりで始まった割には、少々寂しい数字と言える。
「食べているもの、着ているものあり得ない」
私は4月11日の初回で見るのをやめたが、会う人ごとに口をついて出るのは「内容がひどすぎる」だった。「60~70年代に女手一つで4人の子どもを高校(1人は短大)まで行かせられたのか」「借金はいつ返したのか」「青いシークヮーサーは酸っぱすぎて丸かじりできない。胸やけが心配」「当時フーチャンプルの麩を卵で溶くなんて贅沢」……。キャストの演技が良いだけに残念だ。
高校までを山原で過ごした青山惠昭さん(78)は一刀両断。
「父がいなかったので母が(米軍保養施設の)奥間レスト・センターに軍作業に行っていました。VOA通信所もありました。ドラマで食べているもの、着ているものはあり得ない。まるでおとぎ話の世界で、朝からちむどんどんどころか、“ちむわさわさ”(心がざわつき落ち着かない状態)なので見ないようにしています」
山原ではなく中南部の若者言葉
本稿では脚本・演出の「ヌケ」はさておき、使われていることばの違和感に言及したい。山原(伊江島)出身の私は、ひそかに山原の言葉がついに全国デビューを果たすと期待を寄せていた。しかし放送では、山原とは明らかに違う「本島中・南部」のアクセント、イントネーション、それも若者言葉だった。
沖縄の言語(琉球諸語)は、奄美、沖縄島北部(国頭)、沖縄島中・南部、宮古、八重山、与那国に6大分類される。「北部と中・南部とを分けるのが東海岸の屋嘉と石川間、西海岸の恩納と谷茶間である」(中本正智著「図説琉球語辞典」)。
学説を持ち出すまでもなく、県民同士の日常会話ですら「あんた、やんばるんちゅねえ。じゃあパ・ピ・プ・ペ・ポだねえ(笑)」と交わされる。中・南部と大きく異なるのが、ハ行がパ行に置き換わる。これが大きな特徴だ。農民は「ハルサー」ではなく「パルサー」となる。
それとアクセント。日本語のアクセントは、開高型(アクセント位置が最初)、中高型(同・真ん中)、尾高型(同・最後)、平板型(フラット)に分類される。ウチナーグチではないが、例えば「クラブ」を中高年なら開高型、若者は平板型と言えば分かりやすいか。
イントネーションは文節の抑揚だ。耳のいい人なら、名護と今帰仁の違いは微妙でも、名護と糸満、名護と宮古なら簡単に聞き分けられるはずだ。