沖縄・奄美が世界自然遺産登録へ やんばる、西表の特徴と今後の課題は

 

「さらに一歩踏み込んだ保全策を」

 地形や特徴がそれぞれ違う場所に固有の生物が生息しているため、当然保全のあり方も島によって変わる。浪花さんは「これまでの自然遺産に登録された場所の保全策を参考にすることもありますが、基本的には場所ごとに応じて対策を考えていかなければならないのが現状です」と説明する。

「西表は観光管理に関する要請事項の中でも、さらなる対策を求められています。もともと人がいっぱい訪れていた場所だったのですが、遺産登録後はさらに人が増えることも予測されます。そのため、人数制限も視野に入れたエコツーリズムの仕組みづくりを竹富町とも協力して進めているところですが、人の入り込みによる自然への影響についてはモニタリングを続けていくことが必要です」

 本島北部は那覇からのアクセスも良く、細かい林道が走っていることもあって特に手厚い保全が必要な「コアエリア」にも比較的容易にアクセスできる。「結構簡単に行けてしまうというのはやんばるの良い所でもありますが、同時に危惧する所でもあります」。貴重な生物の密猟や、利用者が急激に増えることで保全に支障が出ないかということは大きな問題になるため、環境保全のための林道の使用制限の可能性も含めて慎重に模索中だという。

 「観光地として人を誘致することと、きちんと環境を守っていくことのバランスをとるのは難しい所ですが、きちんと向き合わなければならない問題です」と浪花さん。「これまでもさまざまな対策を講じてきていますが、登録後の利用者の増加を見据え、今後はさらに一歩踏み込んだ対応が必要になってきます。登録が決まるまでも、決まってからも気を抜かずに取り組みを進めていきたいと思ってます」と語った。

沖縄島北部の雲霧林

 自然遺産に限らず、自然環境を見どころとする観光地には常に「誘致と保全」という課題が付きまとう。今回の世界遺産登録は“喜ばしいこと”として受け止められると同時に、多くの人が訪れ自然が荒れることへの懸念やその対応策の重要性も強調される。その一方で、外部から人が来ることによる地域活性化への期待もある。

 「観光立県」を掲げる沖縄県だが、現状を見る限りではこれまで恵まれた自然環境や立地の優位性・ポテンシャル頼みで、保全よりも圧倒的に誘致に比重を置いた施策を積み重ねてきているように思えてならない。今回の登録への動きを機に、観光や自然環境との向かい方を改めて見直し、きちんと「自然遺産」として世界に発信していけるような展開を期待したい。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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