沖縄・奄美が世界自然遺産登録へ やんばる、西表の特徴と今後の課題は
- 2021/7/16
- 社会
「国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト記載種もごく狭いエリアに95種が生息しており、この点も非常に特徴的です」。生物多様性保全の重要な指標となるレッドリスト記載種にも含まれているイリオモテヤマネコは西表島だけにしかおらず、西表島はヤマネコが生息する「世界最小の島」だ。
このように、推薦地域にいる多くの生物たちが「その場所にしか生息していない」ということが、固有性や特殊性といった極めて大きな独自性を形作っている。
問われる地元住民の理解
自然遺産への登録は、上述したように一旦延期を言い渡された。今年5月に勧告が出るまでの間、沖縄県は希少野生動物保護条例の制定をしたり、やんばる地域は推薦地への立ち入りに認定ガイドを同伴させるためのプランを策定するなどさまざまな取り組みを重ね、課された「宿題」をクリアしてきた。だが、登録後を見据えるとまだまだ課題は多い。
浪花さんは「これまでは登録のために科学的知見を積み重ねて条件にマッチすることの証明に力を注いできましたが、登録されてからは『保全』のフェーズに入ります」と指摘する。
そこで大きな鍵となるのは、地元の地域住民の理解だ。世界的にも稀な自然環境であることが認められたとはいえ、普段の暮らしの延長線上にそうした場所があると、地元の人にとっては「日常的な風景」として認識されるため、その価値や魅力にはよほど意識的でなければ目が向かない。実際、登録勧告が発表された後、推薦地域内での不法投棄や落書きなどが相次いで見つかっている。
「沖縄は西表を除き、誕生してから年月がそれほど経っていない比較的“若い”国立公園が多いんです。そのため“国立公園に関する地域住民の理解度”はまだまだと言わざるを得ないのが現状です。観光管理も含めて、地域の人たちからの支援も得ながら保全に取り組むことが不可欠です。そのため、保全すべき地域の価値を伝えるための普及啓発がまだまだ必要だし、今後ますます重要になってくると思います」