喜劇人類館 16日から無料公開 琉球人も展示された事件題材
- 2021/2/15
- 社会
「リウキウ、チョーセンお断り」「黒人あり、ユダヤ人あり、朝鮮人あり、琉球人ありアイヌ、インディアン、エトセトラ……その数は枚挙に暇がありません」-。1903年に大阪で開かれた「内国勧業博覧会」において“琉球人”を含む世界各地のさまざまな民族を展示し物議を醸した通称「人類館事件」。この事件を題材にした戯曲を演じる「喜劇人類館」が2月16日から、7年ぶりにオンライン配信で無料上演される。
1976年に劇作家の故知念正真氏によって発表されたこの作品を通して、差別とは何かを考える。正真氏の娘で、企画を主催するAKNプロジェクトの総合プロデューサー・知念あかねさんは「父は、差別される側と差別する側は場合によっては入れ替わるという構造を、戯曲で描いたのだと思います」と話し、あらゆる差別問題が今なお残る現状に一石投じる。
AKNプロジェクト「喜劇人類館」
https://www.jinruikan.com/comedy/
沖縄に見る差別の連鎖
モチーフとなった人類館事件では、アイヌ、台湾、朝鮮、中国、インド、インドネシア、トルコ、タンザニア、そして、琉球から合計32人が集められ、展示された(一部実行せず)。この様子を目にした沖縄県民が、琉球新報に投書したことから、沖縄県内でも抗議の声が上がったという。
1872年の琉球藩設置から1879年の沖縄県設置までの「琉球処分」から24年が経ってなお、異民族として差別的な扱いを受けたことに対して「我を生蕃アイヌ視したるものなり(我々を台湾やアイヌと同一視している)」という主張から反対キャンペーンが展開された。このこともまた、琉球・沖縄の人々が台湾やアイヌの人々を差別するという“差別の連鎖”を表面化させていた。
舞台上で入れ替わる設定や時代
喜劇人類館では、陳列された男女と“調教師ふうな男”の3役が演じられる。その一方で舞台設定や時代軸が次々と入れ替わるため、複数の時代が同じ場面に混在したり、演じ手の役がある瞬間から突如変わったりと、目まぐるしい展開が特徴的だ。人類館の現場や沖縄戦の壕の中、ベトナム戦争時の沖縄、病院の精神科など、多面的な沖縄を通して差別やアイデンティティを考える。
今回はキャストを一新して1日2公演、計4公演に挑む。調教師ふうな男に島袋寛之、末吉功治、陳列された男に津波信一、陳列された女に上門みき、棚原奏を迎え、これまでよりもさらに喜劇色を強めた。
琉球大学教職センター教授で、本公演の演出を務めた上江洲朝男さんは「津波信一さんの喜劇的なセンス含めて、演者自身がやりたいことを取り入れて創っていきました」と話し、「この作品を残していくために、今後の受け取り手である若い人の感性を入れ込んで、創り変えていく必要があると考えています」と今後の作品継承にもつなげる。
配信用の収録はすでに2月13、14の両日に行われた。この事業はAKNプロジェクトが沖縄県と公益財団法人沖縄県文化振興会による「令和2年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業」を活用して実施している。
「誰にでもある差別」に向き合う大切さ
上江洲さんは、自身も2004年の大阪公演などで演劇集団創造の一員として「調教師ふうの男」を演じたこともある。
1976年の作品を2021年に上演する意義は何か。上江洲さんは「差別や偏見は誰の中にでもあると思います」とした上で、「喜劇人類館を見て、思いっきり笑っても良いんです。この作品を通して、差別や偏見をどう捉えていくのか、を考えるきっかけにしてくれたらと思います。差別を『無いものにしたい』から考えないのではなく、どう付き合っていくのかが重要です」と語る。
16、17日に、計4公演を全て配信する。21日まで。同プロジェクトのHPでは、関連イベントとして1月27~29日の3日間に開催されたオンラインイベントもアーカイブで公開している。