沖縄県海外事務所探訪①北京編 舞台は中露蒙3カ国!高まるロシアの沖縄熱

 

コロナ前は激増していたロシアからの観光客

 観光庁の調査によると日本を訪れたロシア人延べ宿泊者数は、2018年から2019年で約1.4倍となる中、その中でも沖縄を訪れた人は約1.7倍と急激な伸びを見せた。沖縄への関心の高さの理由として推測できるのは、ビーチリゾートに加えて「健康長寿」というキーワードだ。

 昨年春に、首都モスクワと第二の都市・サンクトペテルブルクのショッピングモールで開催された日本関連イベントの沖縄ブースでは、シークヮーサーや黒糖に含まれる栄養素などを紹介するパネルに来場者が文字通り“釘付け”になっていたという。

 ロシアの平均寿命は、近年上り調子ではあるものの、2017年で72.12歳と、日本の84.10歳、アメリカの78.54歳と比べてもかなり短く、国民は「体に良い物」に注目度が高い。町田所長は「実際に『沖縄の黒糖を買いたい』と後日問い合わせが来ていました」と振り返る。

沖縄県北京事務所提供

激増するロシア人観光客にザギトワ効果?

 ロシア国内における沖縄の知名度が一段階上がったと思われる出来事が、昨年3月にあった。平昌五輪フィギュアスケート金メダルのアリーナ・ザギトワ選手が、日本国内で開催された世界選手権で優勝した際のインタビューで「沖縄というところに行ってみたい」と話したことだ。

 実はこの発言を引き出したのに一役買ったのが、沖縄県北京事務所の面々だった。

 前述の、モスクワのショッピングモールで開催されたイベントに、ザキトワ選手が招かれていた。森田副所長は「ザギトワ選手のインスタグラムを見ていたら、ビーチの写真がたくさんありました。これはもう、何も言わずにビーチ押しでいこうと思いました」。それから、沖縄の様々なビーチの写真をあれもこれも紹介して、パンフレットをたくさん渡した。

 町田所長は「にこにこしながら話を聞いてくれて、心に響いてくれたんだなと嬉しかったです」と振り返り「サギトワ選手が『沖縄に行きたい』って言ってくれたことも、18年から19年にかけて旅行者が激増した要因に含まれているのかもしれない、と勝手に想像しています」と結ぶ。

 今月1日には東京―モスクワが週2便、東京-ウラジオストクが週1便と、ロシアとの定期線が、以前に比べて便数こそ少なくなったものの再開された。東アジアや東南アジアのみならず、視線を北に向けロシアからもどうインバウンドを呼び込めるか。今年度や来年度は見通しが立たないにしても、物流や人流が活発化した時には、物産分野も旅行分野も対ロシアの伸びしろに期待が高まっている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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