沖縄県海外事務所探訪①北京編 舞台は中露蒙3カ国!高まるロシアの沖縄熱

 

意外な観光需要

 「中国の人、特に男の人なんですけど、政治的なことを抜きにして軍事情報が大好きなんですよ」と森田副所長。たしかに、中国のニュースサイトでは、ジャンルとして「国内」「国際」「経済」などと同列に「軍事」という項目がある。

 「軍隊はカッコいい存在という認識があるようで、沖縄のツアーでは嘉手納の道の駅から嘉手納飛行場を眺めるというのがキラーコンテンツとなっていました。世界最大の軍隊である米軍の、極東最大の空軍基地を見られるという点で、みなさん大喜びです」

 通常、中国軍の施設は生活圏から離れた所にあり、道からは施設の門しか見えない構造で、内部がどうなっているのかなど普通の人には分からないという。それが沖縄ではフェンス越しや高所から飛行機や軍用車両が見える。

 「那覇空港に着陸する時に、併設された自衛隊基地を見て、みんな窓の向こうを見て『自衛隊がある』と、ざわめきながら指さしていましたよ」

 「県としてはなかなか(軍事と絡めたことは)積極的にプロモーションできないでしょうけど、一定のニーズはあります」と森田副所長はほほ笑む。

現地目線での観光ニーズを語る森田副所長

沖縄はどこで勝負できるか

 リモートでの会議やコンサートのライブ配信が一般に浸透し、独自のオンライン文化が形作られた昨今、海外旅行のような「リアル体験」の形相にも変化が訪れるであろうアフターコロナ時代。観光地としての沖縄の立ち位置を確立させることがより一層求められそうだ。沖縄の軸足はどこにあるべきか。

 中国語では、旅行や観光のジャンルとして「海島(ハイダオ)」というワードがある。海のキレイな島、という意味合いだ。沖縄の場合、旅行カテゴリー「日本旅行」にするのか「海島」にするのかが悩ましいという。

 「日本らしさを感じながら買い物をしたいのなら東京に負けますし、海島ならモルディブに負けます」と森田副所長は話すが、それを逆手に取った戦略がある。「『日本旅行も海島も一気に両方楽しめますよ』と押していきます。かつ、治安も良くて、小さい子が一緒でも安心という面も魅力だと思います」

北京と上海で違う志向

 沖縄の特産品を中国で認知・普及させ、購買につなげることも県北京事務所の大切な役割だ。

 歴史ある建造物や文化の中心として栄えてきた北京は、市民が「歴史的なもの、文化的なもの」に関心が高いことが特徴として挙げられている。調査によると、沖縄を文化的なものと関連付けたウェイボ(中国のツイッターのようなもの)の投稿は、12.1%が北京から発信されており、2位の上海の6.6%を大きく引き離している。

 「北京と上海の明らかな違いはここです」と森田副所長。この違いに着目し、例えば泡盛を普及させる際の手法にも工夫がみられる。「泡盛の普及イベントを北京ですると、泡盛にまつわる歴史の部分をもっと知りたがる人が多いので、そのあたりをしっかり伝えていけたらと思います」

 というのも、泡盛をただの商品として売り込むことが簡単ではないことも一因にある。中国の蒸留酒・白酒はアルコール度数が50度や60度で、泡盛では物足りなく感じてしまうこと、さらには若者の白酒離れが進んでビールなどに需要が移っていることから、“度数の高い蒸留酒”そのものが下火になっていることが挙げられる。やちむん(沖縄の焼き物)なども関連付けた「文化ごとの売り込み」で販路拡大を目指している。

北京市内のコンビニに並ぶオリオンビール
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