沖縄美ら海水族館が内陸国ザンビアで遠隔授業 現地の高山医師ら尽力

 

 沖縄美ら海水族館の管理運営などを行う一般財団法人沖縄美ら島財団(本部町)と、海外での医療支援などを行う認定NPO法人ロシナンテス(北九州市)は1月27日、南部アフリカのザンビア共和国の高校生に沖縄美ら海水族館をオンラインで体験してもらうプログラム「美ら海遠隔授業 in ザンビア -Aquarium Live Online Lectures」を開催した。ザンビアの生徒らは日本最大級の水槽を前に海洋生物や生態系について学んだ。沖縄美ら島財団水族館管理部の佐藤圭一統括は「世界中すべての人々の宝である地球環境保全のためにも、国際的に協調して世界平和を作り上げていく責任があると信じています」とメッセージを送った。

これまでにも日本国内で130回以上

 同国ルサカ州のデイビッド・カウンダ校で実施したもので、1月25日にも初回を行った。2月28日には小児病棟で小学生を対象に行う予定だ。沖縄美ら海水族館はこれまでにも同様のオンライン教育プログラムを、日本国内の小児病棟に向けてのべ130回以上重ねてきた。

 沖縄とザンビアを結んだこのプログラムは、沖縄美ら島財団の佐藤統括と、昨年11月からザンビアで母子保健事業に携わる沖縄県立中部病院の高山義浩医師が中心となって実現した。高山医師は約半年間の任期でロシナンテスのザンビア事務所に駐在している。

高山医師「楽しみながら両国の違いを学んで」

 冒頭、高山医師は高校生に対して、「島国の日本では、生活や文化が海と密接に関係しています」と前置きした上で、伊良部大橋や北谷町の海辺の街並みなどを紹介し「ザンビアの湖や川も素晴らしい生態系があります。このツアーを楽しみながら両国の違いを学んでください」とあいさつした。

高校生を前に日本や沖縄のことを説明する高山医師=1月27日、ザンビア・ルサカ州(プログラム画面より引用、以下同)

 プログラムでは、沖縄美ら海水族館の「黒潮の海」大水槽を泳ぐジンベエザメなど実際の生き物たちを前に、学芸員の岡本情さんが中継で解説。約7500㎥の海水で満たされた水槽の中には約60種6200個体の生物がいることを説明した。ジンベエザメの餌付けでは、飼育員が水面に波を立ててエサの時間を知らせると、ジンベエザメが水面に顔を出してパクパクと餌を食べる様子もビデオで紹介した。

 目前にマンタが登場した際には、水中をなめらかに泳ぐその形状に注目し「ザンビアではテラピアがよく見られる魚だと聞きました。でもこのマンタのように魚の形や体長、習性はとてもさまざまです」と分かりやすく示してみせた。

ジンベエザメの大きさを伝える岡本情学芸員

「サメの年齢どのように測る?」⇒答えは背骨に

 サメに詳しい冨田武照研究員は、サメの仲間の特徴として頭の横に5本の切れ込み(エラ孔)があることや、歯がノコギリ状になっていることなどを説明した上で「サメの仲間のうち約3分の1が絶滅の危機にあります。理由の一つに人間が引き起こした水質汚染や乱獲などが挙げられています」と保護の大切さを伝えた。

 佐藤統括は沖縄美ら海水族館が世界各地で海洋生物の調査を進めていることを紹介し、野生のジンベエザメから水中で血液サンプルを採取したり、水中エコーで妊娠状態か否かの確認をしたりしていることを動画で案内した。

 ザンビアの生徒からは続々と質問が飛んだ。

「サメの年齢はどのようにして測るのですか?」との質問には冨田研究員が「背骨の断面が年輪のようになっていて、1年ごとに層が増えてきます」と絵を描きながら回答した。

(左上から時計回りに)沖縄美ら海水族館の佐藤統括、冨田研究員、ザンビアの高校生

「水槽にはどのような水を使っていますか?」との質問には佐藤統括が「水族館の目の前にある美しい海の海水を使っています。みなさんもいつか沖縄にダイビングをしに来てください。ジンベエザメにも会えるかもしれませんよ」と呼びかけていた。

 生徒代表からは「もっと海のことを学び続けていきたいです」とお礼が述べられた。

 終了後、岡本学芸員は「ザンビアは内陸国で海の生物が身近ではない中で授業ができたのが有意義なことでした。生徒さんにとっても初めて知ることが多かったと思いますが、専門的な質問や中身の濃い話をしてもらえて良い時間でした」と振り返った。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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