与那原出身の元TENGA台湾支社長が次に仕掛ける沖縄ブランディング

 

 「沖縄そば」が台湾で中国語に訳される時、こうなることがあるという。「沖繩海鮮拉麵」。ん?なんか違う。たしかに海鮮であるカツオだしを使っているが、普段から沖縄そばに慣れ親しむ人間にとっては、これを海鮮スープだとは思ってはいないだろうし、ましてや拉麺(=ラーメン)だと思って食べてはいない。あるものが外国語に変換される時、その文化・歴史の背景に思いを馳せて言葉を選ばなければ、全く別の意味になってしまう。

 このような言葉の齟齬を埋め、インバウンド向け中国語作成や翻訳ディレクション、台湾進出支援などを包括的に手掛ける企業をこの春に立ち上げるべく準備中なのが、沖縄県与那原町出身で台北市在住10年目のDJきなこもちアイス(本名:平良育士さん)だ。「表現や言葉をないがしろにしてはいけない」と、DJやラッパーとして活動している経歴から、言葉の力で沖縄の産業発展・文化振興を加速させる。

手探り状態で支社設立

 DJきなこもちアイスは、2016年にマスターベーショングッズのTENGAブランドを展開する株式会社TENGAの台湾支社を立ち上げ支社長となり、1月末で同社を退職した。1人で始めた支社は、一番多い時で20人以上の社員を抱え、共にTENGAブランドを台湾に広めた。東京の本社に入社したのは2008年だった。

「正社員になったことで、フリーター時代に抱いていた『将来の不安』から解放はされたんですけど」と話す一方で「逆に今度は、自分の未来が想像できるようになってしまって」と、将来の可能性に蓋をしているような気持ちになってしまった。そんな時にたまたま旅行で訪れた台湾に、また違う選択肢を感じ取れたという。「日本でできないことが台湾ならできるかもと思って」

 とにかく言葉の勉強をするために、2013年に台北で語学留学をした。会社には、業務内容や雇用条件を調整し遠隔で仕事ができないかと掛け合った。今でいうところのリモートワークを先取りした形だ。その後、一度東京に戻って準備を進め、手探り状態で2016年の台湾支社設立に至った。

HIPHOPから得た「リアル」の感覚

 DJきなこもちアイスが“TENGA活動”を展開する中で確信を得たのは「しっかりとブランディングができれば商品は売れる」ということだった。「文化を作って、社会を変える、という視点を持つことが大事です」と強調する。TENGAのチャレンジ自体がそうだ。「いやらしくて後ろめたいもの」という見方が強かった“性”を「表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」というコンセプトで文化を作り、社会の眼差しを変えていったからこそ、今やTENGAブランドの商品はコンビニにまで並ぶようになった。

TENGAブランドの商品の一部(TENGA公式サイトより)
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