与那原出身の元TENGA台湾支社長が次に仕掛ける沖縄ブランディング

 

 台湾支社を設立する前は、いくつかの現地業者がTENGAの販売をしていたが、日本本社のブランディング管理が及ばず、商品が「卑猥で雑な感じ」で売られていた現状があったという。DJきなこもちアイスは台湾でTENGAのブランディングに取り組む上で「当たり前の仕事を地道にしていく」という目線で、こつこつと本来のブランドイメージを積み上げていった。

 HIPHOPに傾倒した10代の自分を思い出しながら「『ラップ』をしている人と『ラップっぽいこと』をしている人って、温度感で分かってしまうんですよね。まだ若かったから、反骨精神で『こいつはフェイク(=偽物)だ、ワック(=ダサい)だ。リアルじゃない』とかって思うわけですよ。その『リアル』を追求する感覚が今も残っている感じです」と話す。しっかりと言葉を尽くしてブランディングすることで「リアル」を伝える。そのことを一貫して続けてきた。

「人参の炒め物」と「にんじんしりしり」は別

 だからこそ、言葉がないがしろにされて“フェイク”のまま世に出ていることに強烈な違和感を覚えている。冒頭の「料理の翻訳問題」がその最たる例だった。

『人参の炒め物』と『にんじんしりしり』は別のものですよね。『ピーマンと牛肉の炒め物』ではなく『青椒肉絲(チンジャオロース)』を食べるからこそ、外国の食文化を楽しめています

 DJきなこもちアイスがさらに注意喚起するのは、食べ物の名前に地名を使う例だ。「日本では今『台湾から揚げ』がブームになっていますが、台湾には鶏を揚げた料理がたくさんあります。それを『台湾から揚げ』で済ませてくくってしまうのは乱暴です。例えば、かしわ天、チキン南蛮、ざんぎ、チキンカツが全部『日本から揚げ』って名前だったら変ですし、炊き込みご飯とジューシーと炒飯とビビンバがまとめて『アジアライス』って呼ばれていたら変ですよね。それと同じことが起きています」

 ただ、初見の人のために、戦略的に何かに例えて説明することが必要だとも話す。「かりゆしウエアの説明をする時に『沖縄発のアロハシャツに似たもので、正装に使われるんですよ』と話すことは良いと思います。だた、名称はやはり『かりゆしウエア』じゃないと。『かりゆし』の4文字には命名者の願いが込められていますから。言葉には魂が宿ります

「文化を作って、社会を変える」

「沖縄の物産品の訳語と説明を、本来は観光協会のような公的な機関が定義するのが望ましいです」と話すDJきなこもちアイス。沖縄そばが「沖繩海鮮拉麵」ではなく、沖縄の人も台湾の人も同じイメージを共有して、同じものを食べて、同じものを楽しめるように。「文化を作って、社会を変える」-。生まれ育った沖縄の「リアル」を、今もこれからも拠点を置く台湾の人々に、文化ごと伝えていく。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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