「領海警備に万全期す」 第11管区海上保安本部長、一條正浩氏

 
第11管区海上保安本部の一條正浩本部長

 2012年9月11日に尖閣諸島のうち3島(魚釣島・北小島・南小島)が国有化されてから、今年で10年が経過した。周辺海域の領海警備を担う第11管区海上保安本部の一條正浩本部長(60)に、国有化後の状況と、国際情勢を踏まえた周辺海域の現状や対策、今後の対応について聞いた。

 尖閣諸島をめぐっては2010年、中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突し、漁船の船長が逮捕される事件が発生。同年には、尖閣諸島周辺で海保庁が退去警告を行った中国漁船が430隻に上った。日中の対立が深まる中、2012年には東京都の石原慎太郎都知事が同諸島を都で所有する構想を打ち上げ、最終的に民主党の野田佳彦内閣が国有化を決めている。

ーー尖閣諸島周辺海域の現状

 中国公船による尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域への入域は、20年に333日(延べ1161隻)、21年は332日(同1222隻)。領海侵入は20年が29日(同88隻)、21年は40日(同110隻)と常態化している。

 ここ数年に関しては、台風やしけなど悪天候時以外はほぼ毎日、中国公船が接続水域に入域し、領海侵入も月に2~3回繰り返しながら、独自の主張を行っている。公船が大型化しており、日本漁船に接近するような事案もたびたび発生するなど情勢は厳しさを増し、極めて深刻な状況が続いている。

ーー警備の方針は

 我々は▽領海領土を断固として守り抜く▽関係機関と緊密に連携する▽冷静かつ毅然(きぜん)と対応するーの三つの方針の下、領海警備に万全を期す。これをしっかり続けていきたいと考えている。

 現場では、小回りの利く1000トン型巡視船と大型船でユニットを組み、バランスを考えながら領海警備に当たっている。

ーー現場での対応力について

 海上保安庁の1000トン型(総トン数)以上の巡視船は、21年度末時点で70隻。中国海警局の1000トン級(満載排水量)以上の船舶などは21年12月末時点の推定で132隻と隻数に差はあるが、すべてが尖閣へ来る船ではない。

 海上保安官一人ひとりの能力を加味した「隻数×能力」という掛け算で評価するべきだと考えている。

 現場の最終責任者として、十分対応できる能力はあり、現状で中国との差は感じていない。しかし、引き続き巡視船を増やす努力と、乗組員の能力向上を目指す必要がある。決して油断してはいけない。

ーー日本漁船の操業について

 私どもは全力で漁船を守るという思いで対応しているので、遠慮なく操業していただきたい。しかし、突然だとすぐに対応できない場合があるので、事前連絡をお願いしている。近年、巡視船が増えたことで、我々が対応できるようになった。体制を強化した効果の一つだ。

ーー国際情勢を踏まえた意気込み

 いつも申し上げている三つの方針の下、領海警備に万全を期す。加えて、我々の役割は主権侵害を防ぐということだ。そのために、今後も訓練や人材育成に取り組み、連携する組織の一つとして、全力を尽くしていきたい。

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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