子どもたちの体験格差に向き合う 沖縄の部活動派遣費問題で冊子発行

 

「支援・補助される側にも寄り添う必要がある」

 派遣費問題の解決に向けたまとめの議論では、みらいファンド代表の小阪亘さんが「事業に取り組む中で、問題意識の“広がっていかなさ”も感じました」と率直な実感を述べた。「補助をしていく中で当事者に聞き取りをすると、この補助や支援の枠外にあるような色んな諦めが生じていることも浮き彫りになりました」。

 今後の事業展開案についての説明をしながら、小坂さんは困窮世帯へのアプローチを「最も難しかったところ」として挙げた。
「貧困に関しては家計が厳しいから補助、ということだけでなく、補助・支援を受ける側の気持ちにも寄り添う必要があるでしょう。加えて、現役で部活に取り組んでいる小中学生たちが、自分の口から自分の言葉で自身の状況をなかなか言うことができないことにも配慮しなければなりません

 この支援事業予算の原資となる「休眠預金活動事業」を実施する、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の岡田太造さんは「現代の“新しい貧困観”を考慮した上で、子どもたちが外の世界を見るという派遣の体験を通して成長し、その後地域に残って地域社会の更新や活性化につながるという流れになれば理想的ですね」とコメントした。
 さらに「子どもたちの成長について、個々の具体的なエピソードを集めた上で、それをどう対外的に見せていくかということも考えて展開することができれば、事業の意義がより鮮明に見えてくるんじゃないでしょうか」と提案した。

 子どもの権利を保障することは、この社会の未来に直接的に関わってくる話だ。

 自分の子どもが部活をやっていなかったり、あるいはそもそも子どもがいなかったりして「この問題は自分に関係無い」と考える人も少なくはないだろう。しかし、自分や他者の子どもの有無に関わらず、今この社会にいる子どもたちの体験をきちんと保障することは、これからの社会を構成する担い手を育むという意味でも、やはりこの社会の未来に直結する。

 「子どもの権利」というと抽象的かつ大きな枠組みでぼんやりとしたイメージを抱くかもしれないが、「好きな部活動を満足にさせてあげる」ということも、紛れもなく子どもの権利保障の1つだ。これを保護者の“自己責任”で済ますのではなく、社会や地域全体で向き合い、考え、そして担えることこそ、今声高に言われている「持続的な社会」なのではないだろうか。

 今回発行された『沖縄・離島の部活動等派遣費問題白書』は、県内は無料、県外へは任意で1,000円程度の寄付を呼びかけて、3月末まで希望者に配布・郵送している。

■関連リンク
『沖縄・離島の部活動等派遣費問題白書』申し込みフォーム
沖縄・離島の子ども派遣基金事業(みらいファンド沖縄WEBサイト)
現状把握にすら多大な労力… 部活動派遣の現場に見る課題とは ∥ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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