“日本のLGBT活動の始祖”南定四郎氏インタビュー 沖縄初のパレード開催から視る「前進」と「危惧」
- 2022/12/22
- 社会
Q.セクシャルマイノリティーを取り巻く沖縄の状況は、まだまだ発展途上と言えそうですか?
「発展途上どころか未開発ですよ。那覇市が『パートナーシップ・ファミリーシップ登録』を、浦添市が『パートナーシップ宣誓証明書』を出して、沖縄県としては知事が『性の多様性尊重宣言』を出しました。ただ、行政としてはそれだけですよね。よく首長や議員は『民意がそこまで至っていない』と言いますが、逆にいえば、民意が至っていないからこそ、行政として目立つことをやってもらいたいわけです」
LGBT×経済活動でさらに社会へ
Q.沖縄の社会がもっとオープンになるためには何が必要でしょうか?
「パレードをしている時は、LGBTの人が『ここにいるんだよ』と可視化されていますが、それ以外の普段の時に、その人たちが何をしているのかというのは見当がつかないんですね。つまり『LGBTが社会に対してどのような貢献をしているのか』を示していくことが非常に重要です。例えば、ピンクドットの役員にはホテル業の方もいますが、ホテルの受付に『LGBTの宿泊歓迎』というメッセージを掲げているんです。それは観光業界に対する貢献につながりますよね。LGBTの立場から社会貢献をしていくことができます」
Q.「LGBTの立場から社会貢献」について詳しくお伺いしたいです。
「例えば国際通りのお店が『ピンクドットが観光面で貢献してくれているから、パレードの日には店先にレインボーフラッグを掲げよう』というように、両者が協力関係になれます。実際に、今回のパレードは『那覇市国際通り商店街振興組合連合会』が協力してくれました。道路の使用許可での警察とのやり取りは組合がやってくれました。日曜日の歩行者天国の中でパレードができたため、日本では前例のない“警察官の警備がないパレード”が実現したんです。これは組合のみなさんのおかげです」
Q.社会貢献で協力し合うという関係構築の在り方は、新鮮に感じられます。
「例えば、同性愛者の人が何人かで土木の会社を作って、川に橋をかけたらとっても社会貢献をしていますよね。儲け仕事でありながら、社会貢献でもあるわけです。つまり、パレードをする以外にも社会に出て行って自分たちの存在意義を可視化する方法はたくさんあります」
Q.経済活動を通して可視化するという考え方ですね。
「LGBTが経済の文脈で語られるということは非常に意味のあることなんですよ。企業や経営者が今、ダイバーシティを重視していますよね。一昔前ならそんなことしたら売り上げが減る可能性すらありましたが、今は逆ですよね。それは大きな変化です。『抑圧や差別に反対して、我々の権利を拡張して、人権を要求する』というスローガンは、私はあまり有効ではないと思ったんですよ。経済を変えなきゃダメで、LGBTが主体となった経済活動を広げていきたいと考えています。LGBTの起業家たちが日本各地に、小さくても良いからビジネスを興すことで、経済活動を通して地域とくっついていきますよね。さらに、自分たちで資金源を確保することで、さまざまな活動を堂々とできるようになるわけです。沖縄で起業するのはそこまで難しいことではないです。アイデアと努力次第ですよ。やる気があるなら3人でも集まってきてくれたら、私も応援していきたいです」