沖縄にこそエンバーミング(遺体衛生保全)センターが必要な理由

 

沖縄だからこそセンターが必要な理由

 遺体を衛生保全するためのエンバーミングセンターは、沖縄にこそ必要だと2人は説明する。

 センターは関東や関西を中心に設置されている。「センターが無い県でも陸続きで移送できますが、沖縄はそれが不可能なので、沖縄にこそセンターがないといけません」とゆい代表は話す。必要とされる理由はそれだけではない。観光客や移住者、米軍基地関係者の多い沖縄では、海外含む県外出身者が死亡した場合、遺体をより良い状態で遺族の元に送り届けないといけないという状況になることが多い。沖縄で遺体を保全する技術がなければ、高温多湿の気候下では損傷が早く進行してしまう。

 また、昨今の沖縄県内の火葬場不足も大きな問題だ。特に今年の8月から10月上旬頃は深刻で、嗣音さんは「亡くなられて火葬まで、12日間もかかった方もいました」と話す。死亡者数が増えたことに加えて、新型コロナで死亡した場合は火葬場の利用時間が限定されてしまい、対応しきれなかったからだ。通常は、死亡から火葬まで2日間程度だというが、11月時点でも5日間程度はかかっているという。

 「腐敗させないようにとドライアイスを使ってどうにか保全しようとしているのですが、それだけでは不十分です。冷たくて重たいドライアイスで体を覆って、寒そうな思いをさせていると、遺族の方にとっても新たな悲しみになります。すごく難しい問題です」(ゆい代表)

 もともと、沖縄は高温多湿の気候であるため、遺体が変化する前に、先に火葬をしてから葬儀をする「骨葬」が一般的だ。先述のような事情から、昨今では沖縄でも葬儀の後に火葬をするケースも増えているという。

葬儀社「観光立県である以上必要」

 エンバーミングの殺菌技術は、新型コロナウイルスにも有効だという。新型コロナウイルスで死亡すると、通常、遺族は感染防止の観点から、顔を見たり体に触れたりしてお別れができずにそのまま火葬となる。こうしたことが、遺族の後悔や悲しみをより増幅させることにもなってしまう。エンバーミングが実現できると、新型コロナも含めた感染症の細菌やウイルスを殺菌できるため、故人としっかり向き合って見送ることもできるようになるという。

 また、獨協医科大学埼玉医療センターの調査によると、病理解剖を行ったうち約65%に何らかの感染症が確認されたことも報告されている。死因に関わらず適切なエンバーミングを行うことで、遺族や葬儀関係者が安心して遺体に対して丁寧な対応をすることができる。

 加えて、エンバーミングの普及は葬儀社からも求められている。有限会社拓商の親泊元隆専務は「葬儀に携わる者として、県内にはエンバーミングセンターがどうしても必要です」と語る。火葬の習慣がないベトナム人が沖縄県内で死亡した時に、遺族がどうしても一緒に帰りたいと強く要望したが、沖縄でのエンバーミングが叶わないまま帰っていったこともあったという。移送の間にも少しずつ遺体は腐敗してしまうことから「観光立県である以上、必ず必要です」と強調し「南米などに世界のウチナーンチュ(県系人)が多いため、遠く離れた沖縄で亡くなった親族に会うために渡航してくる人も待てますよね」と、移民県ならではの意義にも言及する。

有限会社拓商の親泊元隆専務

 クラウドファンディングページは以下。11月11日時点で約220万円の支援を集めている。11月末まで受け付けている。

沖縄に全国初となる”移動式” エンバーミングセンターを作りたい!!| GoodMorning

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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