「具志堅ブラック」どんな色?廃瓶再生で琉球ガラス glass32

 

 名護市宮里にある「琉球ガラス工房 glass32」は、廃瓶を原料にした伝統的な手法で琉球ガラス作品を生み出す、県内でも数少ない工房だ。併設されたショップに並ぶグラスや小鉢の数々。ひときわ目を引くのが、深い藍色のグラデーションが魅力の「青の洞窟」シリーズだ。まるで海の中から水面を見上げているような色味は、代表の具志堅充さんの技術の賜物で「具志堅ブラック」とも呼ばれている。

徹底したアップサイクル

 「県内各地から廃瓶を集めて、どこに行っても見つからない時は南部にまで行ったりしますよ」と、和やかに話してくれるのは、充さんの妻・佳子さんだ。工房には充さん、ショップには佳子さん。もう一人のスタッフを合わせて現在は3人で工房兼ショップを運営している。この8月で9年目に入った。路地に面した場所にあるものの、地元客のみならずインスタグラムなどを見て来た観光客も多く訪れる。県内外のセレクトショップなどにも商品を展開している。

 琉球ガラスは戦後、米軍基地から出るコーラやビールの瓶を溶かして原料として使い始めたことがその歴史の始まりと言われる。捨てられるはずのものに新しく価値を与えて再生するという、今でいうところの「アップサイクル」が根底にある文化だ。

 しかし今では、廃瓶を集めるコストよりも原料を購入した方が楽だということもあり、廃瓶を原料にする工房は少なくなってきた。それでも充さんが今のやり方を続けるのは「このスタイルの方が好きだから」と明快だ。「(今のような)材料が無い時代から先人たちがやっていた方法が良いなと思うんですよね」と、汗だくになりながら話す。

 材料を大切にする心は、徹底している。赤々と熱されて柔らかくなったガラスを吹く時に使う竿に、作業工程でどうしても付着してしまう“残りかす”のようなものも、しっかりと集めて次の作品への息吹に変える。

友人らの協力で廃瓶集め

 そんな常日頃から廃ビンを探している充さんが頼りにした一人は、酒造所で働く地元の同級生だった。

 今帰仁酒造の大城秀史さんは「どうせ捨てるものですから、ただ捨ててしまうよりは、琉球ガラスとして綺麗な作品に使ってもらった方が良いのではと思いまして」と、友人からの頼みに自然と協力した。使えそうなものをキープしておき、数カ月に一度程度、土のう袋20~30袋分を提供している。

 業務上出た廃ビンはこれまで、回収業者に引き取ってもらっていたという。「こういう(付加価値を付けて再生する)ことがSDGsにも当てはまるのかと思います」と、友情タッグで先人たちの琉球ガラスの製作技法を受け継いでいる。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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