ゴーヤー専用スライサー登場!新潟の伝統技×ビッグワンが実現

 
(アーネスト提供)

 沖縄料理の代名詞的存在とも言えるゴーヤーチャンプルーの専用調理器具がついに登場した。日用品や生活雑貨の企画・販売を行うアーネスト株式会社(新潟県三条市)は、沖縄県内でディスカウントショップ「ビッグワン」を展開する株式会社ビッグワン(沖縄市)の限定オリジナル商品「沖縄チャンプル用スライサーセット」を開発、8月から販売している。意外にもゴーヤーはその“構造上”の問題で、既存のスライサーでは切ることがなかなか難しい野菜だったが、金物の町として知られる新潟県の燕三条エリアの伝統技が、遠く離れた沖縄の家庭の味をより手軽なものとした。

ゴーヤー特化のスライサーが今までなかった理由

(アーネスト提供)

 同商品はゴーヤー用とにんじん用の2種類のスライサーと、スライスしていくうちに食材が小さくなった時でも指を守るための小型トングの計3点セット。ゴーヤーだけでなく、沖縄県民にはおなじみのいわゆる「にんじんしりしり器」があり、いろんなチャンプルー作りに応用できる。

 にんじんに特化したしりしり器は前々からあるのに、なぜゴーヤーに特化したスライサーは今まで登場してこなかったのか。それは、ゴーヤー特有の2層構造にあった。

 ゴーヤーの外側は固く、なおかつゴツゴツしていて強度のある一方、綿がある内側の部分は柔らかい。両面の固さに違いがあることが、他の野菜には見られない特徴だ。

 アーネスト株式会社営業開発本部の高橋俊介さんは「内側と外側の弾力が違うハイブリッドな感じにだいぶ苦労させられました」と振り返る。もともと多くのキッチン用品もラインナップしている同社は、なかでもスライサーには自信があった。「固いカボチャから柔らかいトマトまでよく切れる波型刃のスライサーがあるんですけど、開発担当者も『これだったらゴーヤーもスパスパ切れるだろう』と思っていました」と高橋さん。しかし「ゴーヤーは、なぜか途中で引っかかってしまって切れないんです」とその見立ては外れた。ゴーヤーは予想以上に強敵だったのだ。沖縄県民ほどゴーヤーに触れてこなかった新潟県民にとっては「普段からゴーヤーをスライサーで切ることがなかったので、今回になって初めてその難しさに気づきました」(高橋さん)という。

全国的にも有名な沖縄料理・ゴーヤーチャンプルー

試行錯誤の半年間

 そこで方向転換して、原点に立ち返った。自信作の波型刃はいったん戦力から外し、真っすぐな刃でいかにゴーヤーが切れやすいものを作るか、に注力した。研ぎ具合や刃の角度の調整を重ねた。刃を薄くしすぎてしまうと耐久性が落ちてしまうという問題もあった。試行錯誤の期間は約半年にも及んだ。

 この半年間はまた、切れ味や実用性を確かめるためにゴーヤーを探し集めた日々でもあった。担当者はスーパーを駆け巡っていた。

「ものづくりの町」燕三条の技術力

(アーネスト提供)

 ゴーヤースライサーが誕生できたのは、アーネストが拠点を構える新潟県の燕三条地域(燕市・三条市)が金属加工業やその関連産業を中心とした「ものづくりの町」として町工場の技術が山積していたからだ。

 燕市も三条市も共に金物づくりで栄え、経済的な結びつきで補完関係にあるとされる。高橋さんは「包丁を作るにしても、研磨をする会社、組み立てをする会社、というように分業で行っているのが地域の特色です」と話すように、それぞれの会社がそれぞれの得意分野を育み伸ばしてきた結果、高い技術を誇るようになった。

 2021年にはその地域性を背景に「工学部 技術・経営工学科」のみに特化した三条市立大学が開学したばかりだ。

沖縄のこだわり「厚さ4mm」

ビッグワンの店舗。写真は小禄店(同社HPより引用)

 このゴーヤースライサーには、沖縄サイドからの強いこだわりも垣間見える。それは「厚さ4mm」という点だ。共同開発するビッグワンのバイヤーからの要望だった。3mmだとゴーヤーの持つシャキッとした食感が損なわれ、5mmだと今後は火が通りにくくなってしまう。商品を発案したビッグワンの大城智史常務は「当初は5mmだったんですが、主婦の方や居酒屋の方に聞いたら4mmが一番いいという声がありました」と、実際にゴーヤーで料理することが多い人から直接意見を集めて回った。

 大城常務自身もゴーヤーチャンプルーフリークだ。「酒飲む時に食べたら最高ですよね」と、楽しい時間と共にゴーヤーチャンプルーがある。

 厚さ4mmで切れるスライサーは他にも活用方法がある。「キュウリの漬物ですとか、食べ応えのあるポテトチップスですとか、そういったものも作れたらという発想から思い至りました」と、自由に使ってもらうことを想定している。

ゴーヤーの季節はまだ終わらない!

 このようにして誕生したゴーヤースライサー。一つだけ守ってほしいコツがあるという。それは、縦に切ってアーチ状になったゴーヤーを使い、そのアーチが進行方向に対して横に来るようにして持つ、ということだ。

「この向きだけは守って頂きたいです」と話すアーネストの高橋俊介さん(ビデオ通話より)

 新潟の金物技術、沖縄のゴーヤーチャンプルーに対するこだわりに加えて、使い手の「正しい使用方法」が合わさり、三位一体でその能力を発揮するゴーヤースライサー。暑い暑いゴーヤーの季節はまだまだ終わらない。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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