沖縄への社員旅行、魅力や課題は?ショービジネスの受け皿にも

 

一定規模以上のホテルだからできること

カチャーシーの動きも交えながら話す藤原CEO(ビデオ通話より)

 夜のBBQや酒の席などで「わっちゃわっちゃ感があるからこそ盛り上がれます」(藤原CEO)というように、大人数で非日常を味わえるという点に、社員旅行の魅力がある。「カップルや家族での旅行でしたら、ピアノの生演奏があるようなホテルのレストランでしっぽり過ごすという楽しみ方もあると思いますが、80人で行ってみんなで楽しむというのはそういった旅行とは違う点です」と藤原CEOは振り返る。「ホテルでお酒を飲んで、そのままそこで眠ることができるということも良い点です。例えば東京や大阪で飲み会をしたとしても、どうしても帰りのことを考えてしまって気持ちにブレーキがかかってしまいますが、ホテルだと最後は自分の部屋に戻るだけで良いので、気持ちとしても攻めた楽しみ方ができます」

 その前提に立つと、宴会場やBBQ環境を備えた一定程度の規模があるホテルに需要が発生することになる。

社員旅行で大切な「集合写真タイム」

 その一方で、どうしても大人数による移動が必須となるため、そろって食事できる場所に席数が求められるという問題もある。藤原CEOはその点について「こじんまりとした名店にはどうしても行けなくなってしまいますよね。ホテルの外で食事をするにしても、団体向けのプランがあるお店ですとか」と話すなど、選択肢の縮小は避けられない。

 また、今回の社員旅行で重要な位置を占めたのが記念撮影タイムだ。家族同士ではスマホでいつでも一緒に写真を撮ることができるが、社員同士ともなると、なかなかそろって写真を撮ることが無いため、写真撮影が貴重な機会とも言える。普段それぞれ違うオフィスで離れて仕事をしている場合は、特にそうだ。

 大和財託の社員旅行では、各スポットで集合写真を残していた。その場所の象徴的なロケーションで大人数が写真を撮れる場所を、受け入れる側として用意することも、観光旅行者の思い出作りに一役買うことになる。

大和財託の社員旅行=7月、沖縄県内(同社提供)

ショービジネスの支えとなる社員旅行

 このように80人規模の社員旅行は、沖縄のショービジネスにとって活躍の場を増やすこととなる。エイサー、琉舞、獅子舞などの伝統芸能を融合させた団体「NEO Ryukyu」は、今回の社員旅行の一環でショーを披露し、楽しませた。

 代表の与那覇仁さんは現在の出演依頼の状況について「8割ほどは社員研修や会社のパーティーです」と説明する。NEO Ryukyuはコロナ禍でステージの場が激減したものの、ことしに入ってからは約60件のショーに立ち、状況が好転しつつあるという。

 生徒の身を学校が預かる修学旅行はコロナ対策の観点から芸能鑑賞については引き続き自粛ムードにあるが、社員旅行に関してはこれまでまん延防止等重点措置や緊急事態宣言で旅行に行けなかったことから、いわゆる“リベンジ旅行”のニーズが高まっている。与那覇さんも「コロナ禍の割に社員旅行は増えていると思います」と肌感覚を語る。

 当初は海外客にも沖縄の文化を紹介するというコンセプトで立ち上がったNEO Ryukyu。「今後はMICE関連でインバウンド需要は伸びると思います」とアフターコロナに向けて期待感を強めている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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