東京パラ女子マラソン金の道下美里選手がトークショー SOLA学園

 
「走ることに出会って、人生が前向きになりました」と語る道下美里選手(中央)と、伴走者の河口恵さん(左)=6月、宜野湾市のSOLA学園(同学園提供)

 学校法人SOLA学園はこのほど、東京パラリンピック女子マラソン金メダリストの道下美里選手を迎えた「トークショー&金メダル披露会」を開催した。同学園のスポーツ健康学科の授業の一環として行ったもの。道下選手は視覚障がいで一時期はふさぎ込んでいたものの「走ることに出会って、人生が前向きになりました」と生きがいを得たエピソードも交えながら、金メダル獲得への努力やチームメンバーへの感謝を口にした。

障がい者スポーツの未来も背に

 道下選手は2016年のリオデジャネイロパラリンピックでは銀メダルを獲得している。視覚障がいがあり、障がいの内容や度合いに応じた競技クラス分けとしては「T12」(視力0.0025から0.032まで、または視野直径10度未満)となる。

 伴走者の河口恵さんと共に赤やオレンジを基調としたユニフォームに身を包んだ道下選手は、金メダルを獲った東京パラリンピックを振り返りながら「東京大会に夢を見てきました。人生を変える舞台だと思って臨みました」と語った。加えて「金メダルを取れば、障がい者スポーツを取り巻く環境や関わり方も変わってくるのかなと思っていたので、夢舞台でしっかり結果を出したかったです」と、障がい者スポーツ全体にとっても大きな意味を背負っていたことも明かした。

 道下選手は病気のために中2で右目を失明し、25歳の時には左目もほとんど見えなくなってしまった。当時について「視力がどんどん落ちていき、日常的にできないことが増えていっている時は、自分の生きている意味や価値が見いだせないようになって、引きこもっていました」と暗い日々を過ごしたものの、マラソンと出会ったことで前を向けるようになり「目標が人をものすごく変えていく」と実体験から話した。

ゴールの喜び「2倍にも3倍にも」

道下選手らを囲むSOLA学園の学生ら=6月、宜野湾市のSOLA学園(同学園提供)

 ランナーの目の代わりとなる伴走者が、コースについて指示を出していく「ブラインドマラソン」はまさに二人三脚で行われる競技だ。それ故に「ゴールしたあとの2人の達成感がすごいです。喜びが2倍にも3倍にもなる。伴走者だけではなく、(トレーナーや栄養士など約100人の)チームの仲間みんなで達成できるゲームです」とその魅力を語る。

 そんな「チーム道下」の一員でもありながら、実際に走る“主役”としての役割について「私のチーム内での専門役割は『走ること』『最終的に結果を出すこと』です。なので、コーチが立てた練習メニューに対して、絶対に妥協せずにこなすよう心掛けました。東京パラリンピックで金メダルを取るという目標が絶対ぶれないように、日々、仲間と約束しながら練習を重ねてきました」と、チームメンバーと心を一つにして勝ち取った金メダルだということを語った。

 スポーツトレーナーを目指す学生も多く耳を傾けていた中で、道下選手はトレーナーとのさりげない会話で自身が鼓舞された経験から「トレーナーさんは選手を後押ししてくれる存在です。ぜひみなさんも選手の力になって、今後活躍してください」とエールを送った。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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