【復帰50年】歴史、基地、経済… 沖縄の今とこれからを“復帰っ子”で議論

 

50年を経て、何をしていくべきか

 数値は改善しているものの、全国的には低い水準にある失業率や県民所得、さらには基地を巡る問題なども踏まえて、復帰によって出来たことと出来なかったこと、そして沖縄の将来像についても議論した。

 仲村さんは基地負担の不平等性や、教育を巡る政策についてのニーズが高いことに触れた。「大きな成長の50年を経て、2025年には4分の1が高齢者になるという時代を迎える。産業構造も含めて社会のニーズも変わってきている中で、格差や貧困といった社会課題についてより必要としている人たちに寄り添う政策が必要」と強調した。
 「復帰っ子」という言葉については「廃れてきた」と正直な感想を述べた上で、「50年というタイミングは『復帰っ子だから頑張ろう』という意味でも節目だと思います」と語った。

「これからの10年間はリスクとチャンスの期間になる」と切り出した國場さんは、1人世帯の高齢者が多く、高齢化が進む沖縄で移動手段をどう担保していくのかが社会的に大きな課題となっていくという認識を示した。
 また、基地を巡っては那覇駐屯地の陸上自衛隊を金武町のキャンプ・ハンセンに移設した上で「米軍の管理権も将来的には日本側で握り、民間での活用も視野に入れていくしたたかさが必要だ」と持論を展開した。

沖縄に「持続的なガバナンス」はあるか

 元沖縄県副知事で“県庁一期生”でもある上原良幸さんは「復帰50年:我々は何をしてこなかったのか」と題して特別講演を行った。

 沖縄振興計画に触れた上原さんは「振興に関わる具体的なプロジェクトを盛り込んだ議論をした上で、県民の叡智を結集したしっかりとした計画を本来ならこの50年で出すべきだった」と強調した。

「でもこの数年のコロナのせいにしておきましょう」と、一言挟みつつ「政府が特措法の5年での見直しを盛り込んでいることを踏まえると、沖縄は試されている。これから3年で、民間を含めてちゃんとした計画を作る議論をやりましょうよ」と語りかけた。

 基地問題については「未だにきちっとした議論をしていない」と断じた。「現実的に考えれば、即時全面閉鎖など出来るわけがない。白か黒かをただ表明するのは政治ではなくて“運動”に過ぎない。白に近いグレー、黒に近い灰色の部分で落とし所をつけるのが政治だ。基地の縮小について先ずは『いつまでは使っていい』という現実的な提案をきちんとしていかなければならない」

 ここ数年で県が標榜している「SDGs」については、「SDGsを掲げるのであれば、先ずは沖縄にきちんとしたSG(Sustainable Governance)があるのかどうかということにも向き合わないといけない」と苦言を呈し、「今の沖縄県に連続性、持続性のあるガバナンスは存在するのか」と問いかけた。

 その上で、これからの沖縄について「沖縄の特性を考え、経済的強さと人間的な暖かさを両立して格差分断社会を克服する議論が必要」と述べた。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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