沖縄のバス路線は複雑? 車社会の公共交通としてのバスをあらためて考える
- 2022/3/30
- 社会
―現在県内のバス停やバスの乗り換え案内を示してくれるツールはあるんでしょうか?
「今は全国的にGoogle Mapを使うのがトレンドで、ここ5、6年でバス停の位置がどんどん落とし込まれていて、乗り換え案内の表示が出るようにもなっています。
遅延の状況もリアルタイムで確認できる路線もあるので、今手っ取り早く使うならば真っ先にGoogle Map。もうスタンダードになりつつあると言っていいと思います。
ツールだと例えば鉄道であれば、乗り換え案内のアプリがいくつかあって、使いやすさを刷新しながら鎬を削っています。一方、県内にもバスに特化した路線や乗り換えの検索サイトがかつてありましたが、正直言ってあまり使い勝手が良いとは言えませんでした。それが利用者を遠ざけた可能性もあります。
こうしたアプリやサイトについては、利用者目線でのきちんとした“使いやすさ”を追求することと、開発するだけじゃなくてきちんと運営していく視点が残念ながら無かったのではないでしょうか。これは県内のバス利用を巡る大きな課題の1つだと考えています」
複雑ということはある意味「贅沢」
―バスも含めた公共交通の充実化は、高齢化社会やSDGsの観点からも今後向かうべき方向性であることは間違いないと思います。バスを使いやすくしていくためには、どのような視点が必要でしょうか。
「端的に分かりやすくする方法として具体的なのは、時刻を確認しなくても分かるダイヤにすることでしょう。例えば、10分、15分といった刻み方で運行するという形で。
県外や海外の事例を参考にするという話も時折見かけますが、立地や人口規模、社会的な状況が全く違う事例を引っ張ってきて無理やり当てはめているケースも散見されますし、それでは当然上手くはいきません。
沖縄なら沖縄の場所や社会状況などの条件に合わせて、きちんとした施策を作り出すことが必要です。
実は沖縄のバスは先進的な部分もいくつかあるんですよ。例えば、半世紀前から複数の事業者間で同じ系統番号を共有している点です。全国ではここ数年で系統番号の共通化や見直しが行われています。関連して、バス停も複数業者で1本化している場所が比較的多いというのも、分かりやすさで見ると良い点の1つです。
ただ沖縄の場合、社会的な背景として『移動=車』という過度な車依存があります。これは非常に大きい。この状況ではバスの利用者増は見込めないし、路線やダイヤの充実化も望めません。本来なら、車を運転しなくても移動ができるということを起点にして、地域のあり方を考えるべきだと思うんです。
見方を少し変えると、複雑に見えるということはそれだけたくさんバスが通っているからであって、それはある意味贅沢でもあるんです。ほとんどの本島内市町村にバスが通っていますからね。
また、車を使う人は車しか使わないですが、バスを使う人はバスだけでなく当然タクシーも使うし、歩きもします。最近はシェアサイクルも増えてきているので、車以外の複数の交通機関を活用して十分移動可能だと思うんです。
バスの路線や乗り方に分かりづら過ぎる部分があるのも事実ではありますが、一方で移動についてのリテラシーをつけて、市民側からも歩み寄ってくれれば、きちんとした社会基盤としての公共交通を築くことにつながるのではないでしょうか」
■関連リンク
☆バスマップ沖縄 WEBサイト
☆渋滞解消はゴールじゃない 車中心思考からの脱却を 沖振計にツッこむ〜公共交通編(1)‖ HUB沖縄
☆渋滞解消はゴールじゃない 車中心思考からの脱却を 沖振計にツッこむ〜公共交通編(2)‖ HUB沖縄