「沖縄の負の側面をエンタメに」 映画『ミラクルシティコザ』監督インタビュー
- 2022/2/15
- エンタメ・スポーツ
―基本コメディタッチの作品ですが、コザの歴史を描く上では愉快ではない部分を作品に反映させることも避けては通れませんし、そうした場面もありました。撮影にはどう臨みましたか。
「沖縄の戦後史についてのエピソードを悲しいもの、感動的なものとして描くことには、正直違和感があったんです。悲しい話を悲しいものとして表現する、というだけではその先の広がりが無いと思います。もちろん戦争や事件そのもについて忘れてはいけない、というのは大前提ではありますが。
エンタメでやっていく以上は、僕は希望を見せないといけないと思う。だから、ある意味で沖縄の“負の側面”をエンタメにしたいという気持ちがあったんです。そんな中で、今でも“ロックだけ”でいきたいという沖縄市がどんな風になっていくかということに、この街に住む若者として興味がありました」
―コザ騒動を思わせるシーンでは、県民同士の分断も描いてましたね。
「事実としてのコザ騒動を描いたというわけではないのですが、劇中では自分なりのあの出来事の“結末”を撮ったつもりです。暴徒たちのセリフに自分の気持ちを込めました。
アメリカみたいな大きい存在には立ち向かえないから、内輪同士で争うことがすごく切ない。何て虚しいことをしているのか、ということを描きたかった。
『政治的なことに触れてない』という意見もありますが、僕なりにちゃんと批判してるつもりはあります。たくさんの見方も意見もあるからこそ、本当に難しい、複雑な感情が渦巻いているシーンでした」
―歴史的事実などを踏まえてエンタメに盛り込んで表現することについてはどう考えていますか?
「エンタメには、報道で届かなかった人たちにも届けられるという面があります。ある意味では事実よりも“面白く”広がっていく可能性がある。それが社会的に良い方向に進むきっかけになれば、事実ベースの出来事を描く意義はあります。
ただそれがあまり意味のない消費になってしまうと、当事者も含めて浮かばれない。一過性のものになってしまうとリスペクトが足りない作品になってしまうと思っています」
―地元を映画で描くということについてはどんな感覚でしょうか。
「地元の街を描くなら、この街で育った自分が1番上手に描かないといけないということは思っています。たとえスピルバーグが撮影しに来たしたとしても、沖縄市に生まれ育った以上はスピルバーグよりも上手く描かなきゃいけないだろうなと。
当然プレッシャーでもありますけど、どんな才能ある人が来ても負けないようにというのはありますね」
―沖縄という地で映画などのクリエイティブな表現をすることについてはどう考えていますか?
「先ずは自分自身が映画監督として売れないといけないという圧倒的な欲望があって、今現在突っ走っているという感じです。そうしないと、今まで僕を信じてついてきたスタッフやキャストが報われない。
これからどんな風にすればエンタメの世界で通用するのか、ということに挑んだ1発目の作品が今回の『ミラクルシティコザ』です。
呼ばれればもちろん県外でも海外でもどこでも行きますが、最初の原点は沖縄ということは言い続けていきたいし、沖縄を盛り上げたいという思いは本当にありますね」