「優勝してJ2に戻るんだろ!」FC琉球またも連敗、サポーターから叱咤の声

 
試合終了後、サポーターの叱咤の声にじっと耳を傾けるFC琉球の選手たち=5月3日、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアム(長嶺真輝撮影)

 試合終了後、一様に暗い表情を浮かべるFC琉球メンバーが挨拶でサポーター席に向き合うと、スタンドにいた1人の男性が拡声器を握った。

 「シュート打たない攻撃的サッカーなんて聞いたことねえよ!」

 「J2で優勝するんだろ!ベテランだけ、若手だけじゃなくて、全員で話し合えよ!じゃないとチームなんてつくれないよ!」

 汗だくのまま、身動きせず、陽の落ちたスタジアムに響く叱咤の声にじっと耳を傾けていた選手たち。「攻撃的に行こうという中で、シュートが少ないという指摘はごもっともは話です。真摯に受け止めて、またトレーニングしていかないといけない。本当に申し訳ない。その中でも応援をしていただけることに感謝しないといけないと改めて感じました」(倉貫一毅監督)

 サッカーJ3のFC琉球は3日午後、沖縄市のタピック県総ひやごんスタジアムで今季第9戦を行い、12位のガイナーレ鳥取に2ー3で敗れた。3連敗の後に一勝を挙げたものの、またも2連敗。通算成績は3勝5敗1分の勝ち点10で、順位は20チーム中13位のまま。「1年でのJ2復帰」を掲げる中、最終盤に立て続けに許した2失点で痛恨の逆転負けを喫した4日前のアウェー愛媛FC戦と同様に、守備のもろさを改善し切れない状態が続いている。

前半だけで3失点 守備のもろさ露呈

前半42分、3点目を奪われて下を向くFC琉球の選手たち

 前戦で黒星を喫したチーム同士の一戦となったこの試合。両チームとも強い危機感があってか、開始から球際で強くぶつかり合い、前半だけで両チーム合わせて4枚のイエローカードが出る激しい展開となる。

 そんな中、琉球はFW金崎夢生のポスト直撃のフリーキックや強烈なヘディングシュートなどで度々ゴールに迫ったが、先制点を挙げたのは鳥取だった。

 前半12分、右クロスから過去に琉球に所属した鳥取のFW富樫佑太にペナルティエリア内でボールを持たれると、琉球は富樫の眼前にいたディフェンダー2人が体を寄せ切れず、右足でネットを揺らされた。さらに前半19分にも右サイドからグラウンダーでペナルティエリア内に縦パスを通され、ゴール正面からほぼフリーの状態で追加点を許した。

前半29分、強烈なミドルシュートで1点を返すMF中野克哉

 琉球はその10分後、MF中野克哉がコーナーキックの跳ね返りを拾い、ペナルティエリア外から左足で強烈なミドルシュートをゴール右に突き刺して1点差に詰め寄る。このまま後半に入りたかったが、前半終了間際の42分、ディフェンスラインの裏へのパスでまたもフリーをつくられ、シュートがクロスバーに弾かれたところを頭で押し込まれて1ー3と再び突き放された。

 後半はほとんど決定機をつくれないまま、時間だけが刻々と過ぎていく展開に。後半44分に途中交代のFW野田隆之介主将がDF上原牧人からの右クロスに左足で合わせて2点目を奪ったが、時すでに遅し。前半の大量失点が響き、1点ビハインドのまま試合終了の笛が響いた。

必要な「ディフェンスラインの間」を締める意識

右サイドを突破するDF柳貴博(左)

 シュート数は7本にとどまったが、中野やMF富所悠らが起点となり、右サイドバックのDF柳貴博が度々駆け上がってクロスを上げてゴールに迫った琉球。しかし、守りでは度々ディフェンスラインの間のスペースを突かれて失点を重ね、3,423人が集まったホーム戦で白星を挙げることはできなかった。

 度々相手にスペースを空けてしまった柳は「攻撃ではテンポ良くパスを繋げている場面もあったし、自分も何本かチャンスをつくったんですが、守備では自分のところから2失点してしまいました。監督から『センターバックとサイドバックの間を狙われてるから内側を締めろ』と言われている中でのこの失点は反省しないといけないです」と厳しい表情で語った。

試合後の記者会見で試合内容を振り返る倉貫一毅監督

 倉貫監督もディフェンダー陣に対して「(間のスペースを)締めるであったりとか、あと一歩内側にポジションを取るということは要求したい」と改善を誓う。ペナルティエリア内でボールを持った相手にプレッシャーを与え切れない状況についても「寄せの甘さは明らかに修正しなきゃいけない部分です」と語り、強く口を結んだ。

 7日には天皇杯予選の決勝で日本フットボールリーグ(JFL)の沖縄SVと“沖縄ダービー”を戦い、その後はアウェー2連戦へと向かう琉球。次のリーグホーム戦は6月3日のアスルクラロ沼津戦となる。この1カ月でチーム状況を改善し、今度こそホームで熱いサポーターたちに勝利を届けたい。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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