沖縄で進む軍事拠点化 「台湾有事」を回避するために
- 2022/2/6
- 政治
3.台湾危機とその背景
一体なにが起こっているのでしょう。昨年4月、インド太平洋軍司令官が米上院軍事委員会で「早ければ6年以内にも中国軍が台湾に侵攻する能力をもつ」と発言したことで台湾危機の米世論が一気に加速しました。同月菅前首相はバイデン大統領との共同声明で50年ぶりに台湾共同防衛にしました。日本でも台湾有事が声高に叫ばれるようになりました。1972年の佐藤・ニクソン共同声明でニクソン大統領は中華民国(台湾)が中国を代表するとし、台湾への軍事関与を表明して以来のことでした。それには背景があります。
佐藤・ニクソン共同声明の直後、ニクソンは急転直下北京を訪問し国交正常化を実現しました。日本も同年、田中角栄首相が北京を訪問し、周恩来首相との会談で共同声明を発表しました(ここで尖閣諸島の領有権問題は両首相の合意で棚上げにされたと言われています)。1978年には日中平和友好条約の締結に至りました。共同声明と平和友好条約は日本が台湾を中国の主権下にあることを認めるものでした。それまで台湾、すなわち中華民国が中国唯一の政府として国連常任理事国の議席を持っていましたが、アメリカが中華人民共和国(中国)を国家承認した後、常任理事国の地位は中国に移ります。台湾は国連の議席を失い、日本も台湾と正規の外交ルートを絶たざるを得なくなりました。
中国(中華人民共和国)は建国以来一貫して「一つの中国」を主張し台湾の独立を認めない立場をとってきました。これは国連の議席を持っていた時期までの中華民国の立場と同じです。中国は台湾が独立の動きを見せる度に政治・軍事にわたって台湾を威嚇してきたのもその故です。1995年から1996年にかけての台湾海峡危機(第三次)のときもそうです。中国に対抗する姿勢を示していた李登輝政権下の台湾政府への警告のシグナルを送ろうとしたものとされています。このときアメリカは空母(打撃群)を台湾海峡に派遣し中国をけん制しました。現在の台湾危機と言われるものはこの時と同様の状況を想定してのことです。