経済安全保障の観点も 沖縄県「地域外交」で識者指摘

 
沖縄県庁

 沖縄県の玉城知事は、7月3日~7日の日程で中国を訪問した。北京では、日本国際貿易促進協会(会長・河野洋平元衆院議長)に同行して、李強首相らと面談し、定期航空路線の復便やビザ申請手続きの緩和などを求めた。名桜大学の志田淳二郎国際学部准教授に、沖縄県の「地域外交」について聞いた。

―玉城知事による訪中をどう評価されますか

 地域情勢が緊迫度を増している中で全く交流がなくなってしまうと、偶発的な衝突が起きてしまう危険性が高まる。交流を活発化させ、コロナで打撃を受けた沖縄経済を潤わせる意味では、知事が訪中して交流を訴えたことは、それなりに評価できる。

 ただ、県が力を入れている「地域外交」は、情報、情勢の分析が何より大事だと思う。相手側から厳しい発言があったときに、どう反論するかなど、緻密な検討も必要だ。自治体レベルが行うには、限界があるのではないか。

―中国側が得たものは

 訪中前、各種メディアが玉城知事は慎重に行動すべきだと声を上げていた。今回の訪中で中国側が得た物は、それほどないようにも思える。尖閣問題についても、玉城知事は(北京で記者団に対して)「政府の方針を踏襲する」と発言している。

 河野元衆議院議長も、中国で施行された反スパイ法の改正などについて、対中投資を減速させてしまうからということで、注文を付けた。

 ただ、これから中国が台湾問題で何らかの行動する場合、「沖縄カード」で日本政府などを揺さぶる可能性は十分にある。沖縄を含めた日本の世論動向を見ていることも想定される。

通州区博物館倉庫で北京市政府関係者から説明を受ける玉城デニー知事=4日(写真提供・沖縄県)

―米国は、国務長官などが訪中する一方、中国への警戒も呼び掛けています

 アメリカの対中政策は、一貫して「競争」だ。大国間の競争は、地政学ゲームとして捉えられがちだが、衝突を避けながらも、民主主義と権威主義という「体制間の競争」の側面が濃厚に出てきている。

 中国は、コロナ危機をめぐり権威主義は決断を下せばスピーディーに多くのことができると、権威主義の優位性を主張した。

 一方、欧米では民主主義の開かれた社会を中国が利用して、さまざまな工作活動を行っているという声が高まっている。広島で開かれたG7サミットでは、中国との関係についてリスクを低減する「デリスキング」の措置を執るべきだという話になった。

―地域外交を取り巻く状況は厳しいですね

 そういう状況は、理解しておいた方が良い。(サミットでの流れからすれば)経済安全保障の観点も、考慮するべきだろう。私は、地域外交には限界があるという立場だが、仮に続けるのであれば地域外交室を充実させる必要がある。沖縄だけでなく、もっと「地域の平和」を語っていくことも重要だ。

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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