現職4選か市政刷新か 石垣市長選、今月27日投開票

 
石垣市役所新庁舎

 名護市、南城市の市長選を終え、「選挙イヤー」を迎えた沖縄の次の舞台は2月20日告示、27日投開票の石垣市長選に移った。自民、公明が推薦し4期目を目指す現職の中山義隆氏(54)と、市政野党や市民団体が支援する市議の砥板芳行氏(52)の一騎打ちとなる見込み。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光の振興、自衛隊誘致などが争点となる。4日には八重山青年会議所(JC)主催の討論会も開催され、両氏が相まみえ論戦を交わした。

分裂回避

 市長選では、中山市政の野党である革新勢力の候補者選定が難航した。保守系候補に革新が相乗りし市政を奪還した2021年1月の宮古島市長選の「成功体験」に倣い、石垣でも野党勢力が保守系候補の擁立を模索。議長経験のある保守系元市議に出馬要請を固辞されたものの、昨年12月、中山氏と距離を置く保守系の砥板市議が革新勢力の意向を汲む形で出馬を表明。ようやく対決構図が固まったかにみえた。

 ところが、この動きに市議会の一部野党が反発。重要争点と位置付ける陸上自衛隊の配備計画について、砥板氏がかつて中山氏らとともに推進という「真逆の立場」にあったことから、若手の野党市議(37)が出馬に踏み切る意向を示し、一転して分裂含みとなった。

 三つどもえの状況を危惧し、動いたのが玉城デニー県政だ。照屋義実副知事(73)が石垣入りしたほか玉城知事自身も調整に入り、「対中山」で一つにまとまり市政奪還を目指す方向を確認。立候補の意向を示した野党市議は砥板氏らと「住民合意のない自衛隊配備に明確に反対する」ことなどを盛り込んだ政策協定を交わし、自身の出馬を取り下げる運びとなった。

 こうして自公が推す中山氏と、玉城知事ら「オール沖縄」勢力が支援に回る砥板氏との一騎打ちの構図が固まった。

陸自配備、尖閣対応で違い

 石垣市長選には日本政府も大きな関心を寄せる。政権与党と玉城知事率いる「オール沖縄」との代理戦と位置づけられる意味合いもあるが、それ以外にも、石垣市が日本の国境周辺にあって尖閣諸島を抱えていることや、厳しさを増す安全保障環境に対応すべく政府が陸上自衛隊の部隊配備計画を進めていることと深く関係する。

 2月4日に石垣市内で開催された八重山JC主催の公開討論会の様子から、2氏の主張を見ていこう。

 まず違いが鮮明となったのは、陸上自衛隊配備計画をめぐる住民投票実施についてだ。防衛省の計画では、2023年春には島の中央に位置する地域にミサイル部隊などが常駐する駐屯地が開設される予定となっている。配備の賛否を問う住民投票実施に向けて、これまで約1万4千人の署名に基づく住民による直接請求や、議員提案での条例制定を求める動きがあったが、いずれも議会で否決されている。

 中山氏は、市長として住民投票に関して議会に提案しない立場を強調。首長が提案する方法以外にも、住民の直接請求や議員提案による方法があり「(住民投票)実施にはさまざまなやり方があるので、実際にはそれぞれが取り組んでいただければいいと思う」と述べた。

 砥板氏は、市議として二度の住民投票の採決で反対に回ったことを説明。その上で、依然として陸自配備で島の世論が二分され、防衛強化の新たな動きもあるとして「これまでの検証も含め民意を測る必要がある。市長提案で住民投票条例を議会に提案したい」と話した。

 一方、中国が領海侵入を繰り返す尖閣諸島情勢への対応については、両氏とも「日本の固有の領土で石垣市の行政区域」として取り組みを進める点では一致したが、その姿勢に違いがみられた。

尖閣 沖縄ニュースネット
尖閣諸島の魚釣島 内閣官房HPより

 砥板氏は、日中間で不測の事態を回避する危機管理メカニズムを構築するための合意が交わされていることに触れ「高い緊張状態にある中で、ある意味政治的思惑を持った、突然調査を強行する、導火線に火をつけるような行為は現に慎むべきだ」と主張した。中山氏が1月下旬、東海大学の調査船に乗り込み尖閣周辺海域で視察した行動を暗に批判した。

 中山氏は、近年繰り返される中国海警局の船による領海侵入について「中国との信頼関係というものにおいては全くないと考えていい」と言い切り、市として尖閣への公務員の常駐や灯台、気象観測装置の設置を国に働きかけてきたことを強調。その上で、漁業関係者の操業のため周辺海域の水質や水温の調査など、市としてできることを進める考えを示した。

選挙イヤー第2ラウンド

 1月23日に同時にあった名護市、南城市の市長選はいずれも自公の推薦候補がオール沖縄の候補を退けて勝利した。県内政局の天王山たる秋の知事選に向けて、石垣市長選はいわば、選挙イヤーの第2ラウンドだ。

 知事選に向けた動きもにわかに活発化してきた。報道によると、玉城知事は2月議会(15日開会)の会期中に2期目への決意を表明するという。4月には沖縄市長選、夏には参院選と続き、知事選と同時期に那覇市や宜野湾市の市長選も控える。一連の選挙が終われば、24年6月に任期満了となる県議選まで、沖縄県内はしばらく重要選挙がない期間に入る。その意味でも、22年の一つ一つの選挙は知事選を見据えた県内政局を占う資金石となる。22年が選挙イヤーと称される所以である。

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