U-18島唄者コンテスト 島唄を継承する若者たち

 

 「生きる民謡」と言われる沖縄の島唄に取り組む18歳以下の若者たちに、活動の機会を増やすと共に「島唄」と「しまくとぅば」の継承と発展を図ることを目的として、2017年に始まった「U-18島唄者コンテスト」(主催:沖縄県文化協会)。三線と唄の技術を競うだけでなく、沖縄に伝わる言葉と心を理解して話す「しまくとぅば」で、自己紹介や曲への思いをスピーチすることも審査対象になるのが特徴だ。

テーマは「生まり島」

 昨年の大会は緊急事態宣言が発令されており、全て動画審査になってしまったが、今年は予選が動画審査、決勝は、人数制限された観客数ではあったものの、国立劇場おきなわ小劇場の舞台に上がっての審査となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの教室が閉鎖、思うように練習できない環境の中で決勝に残ったのは、14才から18才の県外1名を含む15名で、「生まり島」(うまりじま)をテーマに日頃の練習の成果を披露した。

 審査の結果、最優秀賞は「どぅばらーま」を唄った岡山県の岡山学芸館清秀中学3年・池田陽生さん(15)、優秀賞は「新デンサー節」を唄ったうるま市の石川高校3年・石川未侑さん(18)、奨励賞は「与那国ションカネー」を唄った八重山農林高校1年・山田健太さん(16)がそれぞれ受賞した。

 最優秀賞の池田陽生さんは、唄もさることながら、しまくとぅばのスピーチが八重山の人よりも島んちゅらしいと審査員を唸らせた。

池田陽生さん

 本人は「とぅばらーま(訪う=とぶらう、から。若い男女が互いに相手のもとを訪れ、それぞれ想いを伝える掛け合いの歌・相聞歌)は、八重山民謡の中でも一番難しいと感じる憧れの民謡。歌の意味や思いをどうのように唄えば伝わるのか考えながら練習しました。緊張してちょっと不安だったけど、良かったです」と喜びを語った。

 実は昨年の大会でも優秀賞を受賞しており、三線を始めたきかっけとなった東京で暮らす父親が、今回は舞台に駆けつけ、「昨年の大会後に『2番で悔しい、1番を獲りたい』と言っていた。今日は、結果は気にせず思い切り唄えばいいと声を掛けました。よく頑張ったと思います」と息子を称えた。

 池田さんは「将来は八重山に移り住み、八重山民謡を広く知ってもらう活動をしていきたい」と夢を語った。

 優秀賞の石川未侑さんは18才。今年最後の挑戦、笑顔を絶やさず唄い上げた。

池田未侑さん

「緊張感もあったけど、楽しむことを心がけて唄いました。お客様も目の前にいて、去年のリモートとは全然違いました。お稽古もたくさん頑張ったのが良かったです」

 孫の雄姿をニコニコと見ていた祖母の石川タケさん(80)は、「この子が小学校3年の時に突然、『おばぁ、一緒に三線習いに行こうよ』って誘ってきて。おばぁは弾けないけど、1か月一緒に教室に通って見てたんだよ。本当に嬉しいねぇ」と、優しく微笑んだ。

 4月からは沖縄芸術大学の進学も決まっている。「将来は沖縄芸能に携わる仕事がしたい。そしてまた国立劇場の舞台に立ちたいです」と目を輝かせた。

 奨励賞の山田健太さんは母が琉舞の先生、父はギターで洋楽を楽しむ芸能一家。4回目の挑戦となった今回は、初めて与那国まで出かけ、地元のおじぃの唄を聞き、波と風を体感したことで歌い方に変化がでたと言う。

「こういう歴史があってこの場でこの唄ができたとわかった。島の情歌を心に響く唄として、これからも表現していきたい」と意気込みを話した。

山田健太さん

本物の島唄を繋いで欲しい

  審査委員長の大工哲弘さんは願いを込めてこう話す。

「舞台で歌うと、リモートではわからない息づかいや、親からこどもたちに受け継いでいく家族の生き様が見える。最優秀賞の池田さんは、昨年にはないダイナミックさ、郷愁感が見事に表現出来ていた。
 県外の子がこれだけ出来るということは、沖縄の唄が沖縄しか歌えないではなく、グローバル化している証拠。世界の音楽のジャンルに島唄も入れてもいいんじゃないか。大人たちが若い人たちを、どんどん褒めて伸ばして育て、本物の沖縄の島唄を繋いで普及していって欲しい」

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