大量の軽石、撤去の後はどうする? 岩石鉱物学の教授に聞いてみた

 
流れ着いた大量の軽石が沖合に向かって帯状になり、漂っている

保管場所の配慮も必要

 ―現在撤去作業も進んでいて、回収した軽石は各市町村が管理する空いた土地などに集積している状況です。陸上で保管する場合に懸念されることなどはありますか。

「かなりの海水を含んでいるので、雨が降ったりして水分がしみ込むと軽石からゆっくりと塩分が抜けていき、その場所の土壌に浸透する恐れがあります。沖縄本島だと地下水を飲料水として利用している所は一部ですが、離島の場合だと地下水が塩水化してしまうことも考えられ、二次被害の可能性があるのはちょっと心配です。あまり内陸に持って行かず、できるだけ海に近い所に集めるなど置き場所には気を付ける必要があると思います。
 また、先に指摘したように軽石は多量のガラスを含んでいるので、運搬の際などに細かくなって粉塵になり、万が一体内に入ると健康障害を起こす可能性もあります。火山ガラスは拡大して見るとかなり鋭いんです。保管場所の風向きなども考えた方がいいかもしれません」

「シラスビジネス」がヒントに

 ―回収した軽石の総量について正確な数字は出ていませんが、かなり大量になっています。有効な利用法や処理法についてはどうお考えですか

「利用方法については、鹿児島県にある『シラス台地』で鹿児島県工業技術センターが中心になって取り組んでいる『シラスビジネス』がヒントになるでしょう。シラスもケイ酸が含まれる火山ガラスで、軽石と火山灰が混ざったものです。農業的な面では、栄養分が少ないので芋くらいしか育ちません。ただ、そのまま使うか、加工して使うかという点も含めて、利用方法については色々と実用化されており、実は用途は多様にあります
 例えば工業利用であれば、素材をそのまま使うこともできるし、タイルやコンクリートにしているケースもあります。軽い上に強度がある製品が実際に開発されてもいます。粒子の細かいシラスの場合はガラスクリーナーや洗顔料に使われたりしている場合もあります」

「ただし今回は大量に漂着しているとはいえ、シラス台地のような規模での採取はできないので、資源の量から『どこまでできるのか』ということを想定し、そこから逆算して利用法を考えた方が良さそうです。複雑な加工が伴う工程は設備などへの投資も含めると、費用対効果が厳しくなってしまうので、手間をかけずに可能な手段を講じる必要があります。
 また、シラスと違う大きな点としては漂着した軽石が海水を含んでいることもあげられます。工業利用だと塩抜きする必要の無いケースもあるでしょうが、農業利用するとなると塩害が出る可能性がありますから、塩抜き作業が必須になる。その際は大量の水が必要になるので、その部分のコストも考慮に入れる必要があると思います」

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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