コロナ感染等の介護職員不足 別施設から人員派遣コーディネート

 

 新型コロナウイルスに高齢者福祉施設の職員が感染もしくは濃厚接触者となって、その施設の職員が不足する事態に対して、別の高齢者施設から職員を派遣できるようコーディネートする事業を、浦添市の合同会社ソーシャルアクション(崎濱隼次代表社員)がことし7月下旬から実施している。沖縄県の「高齢者施設の感染者等発生時の応援職員派遣支援事業」の委託を受けたもの。職員のコロナ感染時などには、これまで同業者間の横のつながりで助け合っていたというが、多くの応援可能事業者を募ることで、迅速に対応できるようになった。代表社員の崎濱さんは「応援可能な事業者が多ければ多いほど良いです」と、さらなる規模拡大を目指す。

コロナ感染管理の研修も

 ソーシャルアクションは「コーディネート事務局」として、施設や法人同士の応援派遣の支援、応援可能事業者に対する感染管理研修、在宅高齢者への訪問介護などの派遣調整などの業務を行う。新型コロナが発生した高齢者施設に、事業に登録している別の施設から応援職員が入る際には、施設ごとの業務の在り方の違いも考慮しながら現地研修も実施する。

 応援職員は、あくまで元の施設に在籍しながら出向勤務することになる。そのため、勤務条件や待遇などの取り決めでミスマッチが生まれないようにしっかりとした基準を示すなどの支援も行う。

事業イメージ図(合同会社ソーシャルアクション提供)

 崎濱さんは「応援可能施設にご登録頂いて、感染管理の研修を受けるだけでも、自分たちの施設にノウハウを持ち帰ることができるので、それだけでも施設内の感染予防につながります。研修を受けて頂くだけでも結構ですので、ぜひ登録をお願いしているところです」と話す。

 事業のサポート対象は居住型や通所型の施設だけではなく、高齢者を在宅で介護する職員がコロナに感染した場合でも、市町村や地域包括センター、ケアマネ―ジャーなどの依頼を受けて対応する。

これまで無かった介護職員派遣の枠組み

 ソーシャルアクションは訪問看護やグループホームなどを幅広く手掛け、昨年の夏から、クラスター発生で職員不足に陥ってしまった他施設に自社看護師を派遣するなどのフォローを行っていた。そういった活動を続ける中で、崎濱さんは「医師や看護師は、県の医療スキームで支援がスムーズに進みつつありましたが、介護職員の支援については対応をしているところがありませんでした」と振り返る。有志同士が直接電話などで声掛けをしながら助け合っているという状況だったという。

合同会社ソーシャルアクションの崎濱隼次代表社員

 しかし、沖縄県内の感染者数が増加の一途をたどる中で、施設間での直接的な呼びかけでは職員の確保などが間に合わなくなっていた。「(各施設は)日々の業務もやりながら、職員派遣の相談を同時に進めないといけないので、どうしても初動が遅れてしまいます」

 多くの登録施設を知るコーディネート事務局が間に入ることで、コロナ感染者が出た施設の状況に応じて適切な支援を早く募ることができる体制が整い始めた。

応援事業所の増加で体制構築目指す

 県内には現在、高齢者などの福祉施設などが約3500カ所あると言われている。8月下旬時点で9事業者が応援可能施設として登録しているが「まずはもっと応援してもらえる事業所を増やして、感染管理の研修などを行わせて頂くことで、コロナが発生した事業所に対して支援できる体制を構築していきたいです」と、応援規模の拡大に尽力している。

 その上で崎濱さんは「県内の法人の半数以上が1、2施設を小規模で運営されているので、人員に余裕がある訳ではないはずです」と思いを寄せながら「中規模、大規模の事業者様に協力を募っていくことを優先したいです」と当面を見据えている。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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