「新たな沖縄観光」のモデルケースを OCBVが成果事例を発表
- 2022/7/4
- 経済
内閣府の「令和3年度新たな沖縄観光サービス創出支援事業」の中で、収益力向上や質的向上などを目指して新しく開発された「高付加価値沖縄観光サービス」の成果事例を、沖縄観光コンベンションビューローがまとめた。
この事業では、新型コロナウイルス拡大防止と沖縄観光の活性化との両立を図りつつ、自然や歴史、文化などを踏まえた「ストーリー性のある新たな観光サービスの開発」を支援。「ワーケーション」「SDGs」「アドベンチャーツーリズム」といったテーマを基に、世界自然遺産のやんばるを訪ねるツアーや、海辺に設置したサウナで“ととのう”体験など、今後の沖縄観光のモデルケースになりうる事例を紹介している。
テーマやニーズを絞り“自走化”を目指す
成果報告書には、企画概要のほかにターゲット市場規模やニーズ、地域への波及効果、連携した地域団体、さらに想定宿泊日数や販売価格も含めた自走化の計画についても記載されている。
事業で開発された観光サービスは「芸能・工芸」「ワーケーション」「エコ・SDGs」「アクティビティ・スポーツ」などの9つに分類された全22企画。国内観光客を対象に、コロナに配慮して全ての企画で参加人数を抑える小規模分散型で実施された。
例えば、伝統的に受け継がれてきた沖縄の職人技を、琉球王朝文化として括った上で「面」として魅せる企画では、国内の資産状況に比較的余裕がある「アッパーマス層」にターゲティング。
琉球舞踊、歌、三線、琉球料理・泡盛、染織、などの各種文化芸能の歴史や背景を学びつつ、現在第一線で活躍している一流の人材に触れる機会を提供して、簡素化されていない“本物”の文化を体感させることで、「沖縄でしか味わえない観光サービス」としての独自性を担保した内容にした。
この企画がもたらす地域への波及効果としては、各分野の法人に所属する演者・職人の効率的な副収入源の確保や物販収益の可能性が指摘されている。さらに、展望・展開として、香港やシンガポールでの旅行博に出展予定であることも触れられている。
モニターツアー参加者からは「お土産屋さんで売っている紅型と、職人さんが手間暇かけて作る紅型の違いがよくわかりました」(70代女性)という声が寄せられた。
長期滞在の提案、ガイド・接客スキルに課題
一方、事業全体を通して「消費単価や滞在日数の向上」「テーマとターゲティング」「ガイドの重要性」といった視点から浮かび上がった課題・改善点への言及もある。
滞在日数や消費額の向上に向けて日数を長期に設定したツアーでは、「日数の長さが現実的ではない」という意見が寄せられたり、ニーズに合わない企画の満足度が低いことも指摘されている。
さらに「コンセプトや顧客像が曖昧で、なんとなくストーリーをつけてプログラムを組み合わせただけのサービスでは、自走化は難しい」と述べており、ターゲット層ごとのニーズをしっかりと踏まえた上で、観光サービスのテーマ設定をしていくことが求められた。
また、旅行日程の全体を通して案内する「スルーガイド」の存在が満足度に大きく影響しているということが、アンケートから判明した。ワンテーマを深堀りしたサービスでは、そのテーマの専門家の協力が不可欠だが、他方でその専門家の接客スキルが高いとは限らない。
よって「地域やテーマに沿って横断的にガイドできる『スルーガイド』のスキルと、それぞれのテーマにおける『専門家の方々』の接客スキル、両方を高めていくことが、ポイントとなる」とした。
成果事例報告書はOCVBのWEBサイトで閲覧可能だ。7月14日には観光サービス開発に取り組む観光関係者向けのオンライン報告会を開催する。
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