沖縄の島胡椒「ピィパーズ」活用 壁面緑化もスパイスの時代

 

 ピィパーズをご存じだろうか。「沖縄在来の香辛料」「島胡椒」とも言われ、日本では沖縄で栽培がされており、特に八重山地域では特産品の一つに数えられている。その香り高さや効能からピィパーズのファンが増え、生産農家を中心に「沖縄県ピィパーズ生産推進協議会」(通称:沖ピ協)が設立されているほどだ。

 そんなピィパーズ、植物としての特性からもまた違う「お役立ち」を見せる。3月20日に市民ら約25人が浦添市の経塚公園にあるピィパーズの手入れを行った。コンクリートの壁面に沿って伸びるピィパーズは、壁面緑化にも適した植物だ。

守れ47本のピィパーズ

 作業に訪れていた沖ピ協の宇根良則会長によると、公園整備の一環で3年前に74本のピィパーズを植えたものの、全てが上手く育ったわけではなく、今は47本だけが生き残っているのだという。命を終えたピィパーズは立ち枯れた状態のままそこにあった。

 宇根会長は「ちゃんと生かせば緑の壁に変わるんですよ。それぐらい生命力のある植物です。せっかく植えられたピィパーズを何とか生かして、壁面緑化の大きな成功モデルとしたいです」と話す。

 この日の作業はまさに、生き残った47本のピィパーズをしっかりと残すのが目的だ。①根元の雑草を刈り込んで②腐葉土を敷設③さらにその上から草で表面を覆い、雑草や害虫の発生を抑える。生き生きとした成長を促すために、しっかりと生育環境を整える。

 経塚公園はゆいレール経塚駅のすぐそばにあり「緑の壁」が実現すればおのずと多くの人々の目に触れることにもなる。

「潜在的に爆発力がある」

 沖ピ協はピィパーズの県域全体での普及などを目指して2020年12月に発足したものの、その実質的な歴史は長く、前身の「ピィパーズを生かす会」は2006年から活動を開始していた。現在の会員数は95人だ。同会の相談役を務める生産農家の西表秀夫さんは、ピィパーズの魅力を「何って言うのかな、潜在的に爆発力があるわけ」と語る。「匂いを嗅いだり味わったりしてピィパーズを好きになった人は、ピィパーズ関連のビジネスを立ち上げる人もたくさんいます」

ヨーグルトにもSDGsにも

 いつもピィパーズと共に生活している宇根会長。「何にでも合います。朝昼晩、おかずでもおつゆでも全てかけています」と、もはや主食級だ。朝食はヨーグルトにかけて風味を楽しんでいる。

 「ピィパーズを育てることはSDGsへの貢献にもつながります」と宇根会長。「まず目標3の『すべての人に健康と福祉を』。ピィパーズの実や葉には血流を改善する効果があります。そして目標11の『住み続けられるまちづくりを』。無機質なコンクリート面に生気を与えます」。それから、もう一つある。宇根会長は共に作業する仲間たちに目を遣りながら、もう一つのSDGs目標を述べた。「『パートナーシップで目標を達成しよう』です」。力を合わせた努力の結晶は、鮮やかな緑色となって人々の目を癒すだろう。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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