沖縄で断トツに多い「レプトスピラ症」宮古地域で初確認

 
病原性レプトスピラ(Leptospira interrogans)の電子顕微鏡像( 国立感染症研究所 HPより)

 沖縄県はこのほど、宮古地域でことし10月に初めて感染症「レプトスピラ症」が発生したと発表した。確認されたのは2例で、いずれも宮古島市で農業を営む60代男性と80代男性。うち60代男性の方はネズミに噛まれたか裸足での農作業が原因だと考えられており、治療後に退院している。80代男性の感染経路については調査中で、11月17日時点で入院中だ。

 全国的に見ても感染例が沖縄に集中しているレプトスピラ症は、治療せずに放置すると死に至る危険もある。

レプトスピラ症とは

 レプトスピラ症は、「病原性レプトスピラ」という細菌によって引き起こされる人獣共通感染症。感染すると頭痛、発熱、筋肉痛・関節痛、結膜充血などが現れ、重症になると腎機能障害、黄疸などの症状がみられる。

 レプトスピラ菌は、感染したネズミやマングースなどの野生動物の尿や、野生動物から感染した牛、豚などの家畜、犬、猫などのペットの尿中に存在する。

 人には、これらの動物の尿を含んだ水や土壌を介したり、動物に直接接触したりすることで感染する。

 国立感染症研究所によると、レプトスピラ症は中南米や東南アジアなど、熱帯、亜熱帯の国々で大流行がここ最近で報告されている。特にタイなどでは毎年数千人規模の大流行が続いているという。

最近10年間の世界でのレプトスピラ症の流行(国立感染症研究所 HPより)

感染例は沖縄が国内断トツ

 レプトスピラ症は、日本国内では沖縄県内での発生者が断トツで多い。今年は11月14日までに全国で32例が報告されているが、そのうち23例が沖縄県(八重山地域21人、宮古地域2人)でのものだ。国内人口の約1%の沖縄県で、全国に占める感染者率は約72%となっている。

沖縄県感染症情報センター資料より

 時期としては毎年、夏から秋にかけての報告が多くなっている。今年については6月まで報告例が無かったものの、7~9月にかけて毎月5人程度が感染し、10月だけで10人以上が感染している。

本島北部と八重山地域に集中

 統計を取り始めた2004年以降、沖縄県では毎年発生が報告されており、集団感染が起きた2016年は43例(全国計76例)と最多だった。

 沖縄県での感染例は例年、河川の多い本島北部と八重山地域にほぼ集中している。推定感染経路としては「水系感染」が大半を占め、水場でのレジャー活動を行った後に感染していることが多く報告されている。

沖縄県感染症情報センター資料より

 沖縄県保健医療部は「野外活動やネズミの捕獲をした後、3~14日以内に突然の頭痛、発熱、筋肉痛の症状が出たら、すぐに医療機関を受診し、その活動状況を医師に伝えることがレプトスピラ症診断の重要なポイントになります」と呼びかけている。


長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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